アリーナ・コジョカル ドリームプロジェクト@びわ湖ホール 2020年2月11日

生のポルーニンが見たくて、チケットをとった。ポルーニンは野生化が進んでいるが、もはや大きな驚きはない。今回最も衝撃的だったのはキム・キミン。韓国出身のマリインスキーバレエ団のプリンシパルダンサー。1992年生まれ。もうそれはそれはよく跳ぶ。手足は長いし、頭は小さいし、動きは優雅で音楽にぴったり合っているし、何をとっても素晴らしかった。 噂には聞いていたがこれほどまでとは。

うれしい誤算はそれだけではなかった。来日直前のコジョカルの怪我のため、身体への負担の大きいダンスはすべて ハンブルク・バレエ団プリンシパル 菅井円加に交替していた。コジョカルはマルグリットとアルマンとマノンを踊っていた。コジョカルも見られて、その上、菅井円加のクラシックもコンテも見られるなんて「棚からぼた餅」状態だった。

特に菅井のドン・キホーテ第3幕のキトリのバリエーションは見ものだった。何度もけっこう長めのトメが入り、そのブレのなさを強調。人を食ったお転婆キトリ。あんなふうに舞台で遊べるようになるには、相当の技術と度胸の裏打ちが必要だろう。幕袖に入るときに少し滑ったところも愛嬌が感じられてまた好きになってしまった。

さらにもう一つの驚きは、コジョカルの私生活のパートナーでもあるヨハン・コボー Johan Kobborg の「ABC」という演目。コボーはデンマーク出身の1972年生まれのバレエダンサー、振付家で、ルーマニア国立バレエで2016年まで芸術監督をしたという。全くノーマークだった彼の演目は、バレエ公演ではなかなかない「笑い」をとる。英国ロイヤルバレエ団ではできない自由な演出を求めて、コボーとコジョカルが退団したのが2013年。こういう演目は確かに英国ロイヤルではやらない。

この「ABC」という作品、AからZまでの頭文字を持つ単語が次々と発話される。ことばに合わせて音楽が断片的に流れることもあるが、音楽よりもことばが中心。舞台中央に立つコボーがそのことばたちに合わせてマイム交じりのダンスをするというもの。発話される語は英語がメインだが、フランス語のバレエ用語も含まれるし、固有名詞もある。

例えば、Nでは「ニジンスキー Nijinsky」ポーズ。 E では「 アントルシャ・カトル entrechat quatre 」と「アントルシャ・シス entrechat six」。空中で足先を交差したり解いたりを何度も繰り返す男性のバレエテクニックを言う用語。カトル(4回でよい)のときは美しく跳んでアントルシャ・カトルを決めるのだが、シス(6回しなくてはいけない)のときは、無理~と手でやって見せていて笑えた。

Tの最後は「チャイコフスキーTchaikovsky」でそのあとしばらく『白鳥の湖』の音楽が流れて、実は踊れるということをアピール。 バレエのことを知っている人でないとわかりにくいと思われる部分もあるが、コボーの確かなテクニックがユーモラスな動きとマッチし、爆笑を誘っていた。

コジョカルの活躍があまり見られなかったことは残念だったが、びわ湖ホールの一面の大きな窓から見える雪をいただいた山の美しさとともに、いろいろな意味で強い印象を残した舞台だった。

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