「滑舌(かつぜつ)」の良し悪しの個人差

90年代だと思うが、「かつぜつ(滑舌・活舌)」がいいとか悪いとか言うのを聞き、いったいどういう表記をするのかと調べたところ、辞書に記載がなかった。

どうも「滑舌」と書くのが一般的らしいということ、アナウンサーや声優・俳優たちの間で使われていた業界用語だったことがわかった(NHK放送文化研究所)。「舌の回りのよいこと」と説明されているが、わたしなりの解釈では一つ一つの子音や母音を理解可能な範囲におさまるように発音するかどうかだと思っている。

90年代、自分は滑舌のまあまあいい方だと思っていたのだが、最近はよく舌が回らないと感じることが増えた。特に何か理由があるわけでもないのに、舌の両側を歯で噛んでしまい、うまく話せないことがある。

一時期、早口で鳴らしていた黒柳徹子が昔の調子で話そうとして、舌が回っていないぞと思ったことがあったが、同じことがすでに私にも起こりつつあるのだろう。老化というものは実にいろいろなところに現れて来るものである。

老化の問題はさておき、最近気になるのは中1の息子の滑舌の悪さである。もそもそとした話し方は相手に何かを伝えようという意図が感じられない。そうでなくても低い声が聞き取りにくいのに、子音や母音がもにゃもにゃとしか発音されなくてはさっぱり意味がわからない。

それでも我が子の言いそうなことはまだ想像がつくからいい。これが外国語となると手に負えなくなる。

台湾ドラマを見始めた当初、最も大きな悩みは台湾の男性俳優陣(周渝民Vic Chou・言承旭Jerry Yan・藍正龍Lan Cheng-lungなど)の話し方がちっとも外国人にフレンドリーでなく、非常に滑舌が悪いということだった。幸い字幕があるからなんとか理解できるが、台湾のテレビで字幕が出るのは、俳優たちの滑舌の悪さのせいではないかとすら思ったものだ。

例えば、「すぐに」という意味の《馬上mǎshàng》を「マーヒャン」とか「マーハン」と藍正龍が言っていた。

大陸の吹替え声優たちのように《字正腔圓 zì zhèng qiāng yuán》過ぎるのもかえって不自然だと思うのだが、あまりにも適当な発音をされると我々は理解できない。

一般的には男性の方が発音が適当になりやすいという印象があるが、実は女性でも適当な発音をする人がいる。「老化」のせいでなく「手抜きで」となると、今のところ私は一人しか思い浮かばない。

何を隠そう、それは《痞子英雄 Black & White》で陳琳役を演じていた陳意涵Ivy Chen。ドラマの中でもちらほら片鱗が見えるが、メイキングや番宣に出ていると恐ろしく《随便 suíbiàn》な発音なので、一度皆さんもそういう耳で彼女の発音を聞いてみてほしい。

周渝民Vic Chou(仔仔)は《金大班JINTAI-PAN、Memoirs Of Madam Jin》という2009年の大陸ドラマに出演した時、本人の声ではなく大陸の声優にすべて吹き替えられていた。大陸の役者たちは標準語を徹底的に訓練されているから、仔仔の肉声は発音が悪すぎて聞くに堪えないと判断されたのだと思われる。

陳意涵Ivy Chenも大陸での活躍が長いと聞く。果たして吹き替えなしで行けたのだろうか。

 

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