「薬罐」ってどんな罐?

子どもの通っている小学校では毎年12月の第一土曜日にもちつき大会をPTA行事として行っている。子どもも大人も自由参加なのだが、子どもの参加率が9割と非常に高いのが校長の自慢だった。

5年前、初めてPTAの委員をしたとき、いきなりこのもちつき大会を仕切る委員長をすることになってしまった。一度も参加したことのないもちつき大会をリーダーとして仕切るなんて本当にできるのか。不安でいっぱいだったが、小さい学校で委員長のなり手がなく、しかたなく引き受けることになった。

前年度の委員長が知り合いだったので、その人にいろいろ教えてもらいながら、現場を動かしていくことになった。前々日準備の日、この日の任務は家庭科室に集合したお母さん方にもちつきで使用する道具類を洗ってもらうことだった。

昨年度の冊子をそのまま踏襲したもちつきの手引きを見ながら準備を進めていくのだが、実際にやってみるとわからないことがいろいろと出て来る。その一つが準備しておくもののリストの一番最初にあった「薬罐16」と書かれた部分だった。あるお母さんに何を16個出しておけばよいのか訊かれた。

「くすりの缶っていったい何のこと?」私の頭も、はてなだらけになった。

そして、出ている道具でリストに挙がっていないものがないか、確かめて行った。台の上に並んでいるものを眺めていて、誰かがはたと気づいた。

「もしかして、『薬罐』って『やかん』のことちゃう?」

本当だ。昔CMでシュワちゃんが振り回していた金色のやかんが台の上に16個置いてあった。

「だれや。こんなん漢字で書いたん。」

「来年からは『やかん』って平仮名にしてもらうわ。」

今となっては笑い話だが、「薬罐」を「くすりかん」と読んでしまうとわけがわからなくなってしまう。こんなことばも漢字で書かれるともうわからないということだ。

『語源由来辞典』によると、

やかんは薬を煮出すのに用いられたもので、「薬鑵(やくくわん)」と呼ばれていた。
「鑵(くわん)」は、水を汲む器が原義である。
「ヤククワン」から「ヤククヮン」に転じ、「ヤクヮン」「ヤカン」と変化した。

なんと冬に体を温める必需品「カイロ」も漢字があり、「懐炉」と書くのだそうだ。まだまだ知らないことがたくさんあると感心してしまう今日この頃である。

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