秋ごろは毎年髪の毛がものすごい勢いで抜ける。夏の間抜けなかった毛が今になって競い合って抜けている感じだ。一日髪を洗わないと、あちこちが抜け毛だらけになる。
それで、思い出したのが、出産直後の毛の話。
一人目は5月生まれの男の子だった。息子は生まれた直後から髪の毛がふさふさと生えていた。生後3日目くらいに病院でお風呂に入れてもらったら、看護師さんたちがなんときれいな七三分けにして連れてきてくださった。すぐにでも黒い鞄を持って出勤しそうな勢いだった。
二人目は12月生まれの女の子だった。予定日より10日ほど早い出産だった。髪の毛は息子の時と比べるとずいぶん薄く、逆に背中や額ににびっしりと産毛が生えていた。女の子なのに…と心配になったが、早産の子は産毛がたくさん生えていることが多いのだと聞いた。
それから何週間かのち、この産毛が突如として抜け始めた。娘を寝かせたところ、肌着、すべてが毛だらけになるのである。そして、驚いたことに同時期に私の髪の毛もものすごい勢いで抜け始めた。ホルモンのバランスが変化したらしい。それまでなんと長い間抜け毛に悩まされずに来ていたか、そのとき思い知った。
人の体とはなんと不思議なものなのだろう。
赤ん坊を産めばお乳が張って、それまでの貧乳がうそのように大きくなり、ぴゅーぴゅーお乳が出るようになるのだから。眠くてたまらないのに、赤ん坊が指をしゃぶり始めた音だけで目が覚め、お乳をやるようになるのだから。
出産するという体験は、子どもを授かるということ自体もありがたいことだが、こういう動物としての身体の変化が非常に興味深かった。赤ん坊がおなかの中で動く感じから赤ん坊のうんちやおしっこの出方までおもしろかった。
そして、子どもは言葉を覚えていくのである。ある時期が来ると砂に水が沁み込むようにどんどん言葉を吸収していく。
ひと昔前にファービーという言葉を覚えるグレムリンのようなおもちゃがあった。年配の同僚の先生が買って、いろいろ覚えさせて楽しんでいたのを覚えている。私は心の中でひそかに「私は本物のこどもを産んで習得の様子を観察するぞ」と思っていた記憶がある。
実は、本物の子どもはおもちゃとちがってたいへんなことも山のようにあるのだが、得るものも非常に大きい。機会があれば、出産子育てを経験されることを是非お勧めする。今さら私が勧めるまでもないとは思うが…。
