《深情密碼 Silence》のすごいところ

2010年頃、韓流ドラマにハマっていたある中学校の英語の先生から半ば押し付けられるように借りた《深情密碼 Silence》のDVD。これが私の台湾ドラマ初視聴となる。当時は台湾ドラマってこういうものなのかと思いながら見ていたが、今冷静に見直してみると、まだまだ気づきがある。(ネタバレあり)

まず、良い点。

すべての伏線がきちんと説明されて話が終わるところ。戚偉易(周渝民)が死ぬまでにすべての約束を守ろうと決めて一つ一つ実現していくところ。尻切れトンボのまま終わったものがひとつもない。最後に青島へ戻って四喜院の人々にも胡漢新(靳東)にも会う。趙深深(パク・ウネ)の声まで戻る。戚媽媽こと萬美如(劉瑞琪)がビデオレターに登場していた阿翰を迎えに行くところまであり、脚本は本当にすばらしかったと思う。さすが徐譽庭の仕事と勝手に思っておくことにする。

欲を言えば、深深はその後普通に話せるようになったのかとか、四喜院の人たちがもらった土地に建てた新居はどうなったのかとか、知りたいことがないと言えばうそになるが、まあそれはいいだろう。

胡漢新(靳東)は大陸の役者だが、その声のよさに感動した。哲学的なセリフがこの声のおかげでさらに引き立つ。

問題は回想シーンの多さとメロドラマ的な音楽のダサさか。バイオリンの音楽一つでやたらと場面が深刻になってしまうのが、残念だった。あとはサントラの曲しかかからない。話と絡むTry To Rememberも、浜辺で深深が手話で歌う歌(深深が屋上テラスを出て行く場面で戚偉易がおなかの痛みをこらえながら歌う歌でもある)も曲調が古すぎる。

あとは役者のセリフを録音する人の技術が低い。雑音で何を言っているか全く聞き取れないが、下に無理やりな字幕が出るという場面があった。最もひどかったのは、米暁光(賴雅妍)と左鈞(許志安)が戚偉易の病について話すシーン。「自分の不幸を深深に押し付ける気か」というような意味の左鈞のセリフ。アフレコする手間も面倒臭いのか!と失望。

仔仔(周渝民)さえかっこよく映っていれば、パク・ウネさえかわいく映っていれば、それでいいのだ!といった撮り方のドラマで、賴雅妍なんか本当に泣き顔が不細工で気の毒なほどだった。逆に大陸のメンバーはみんな顔も演技も整い過ぎていて違和感を感じるほどだった。あちこちの国のチームと協力して作ろうという発想はよいと思うが、きっといろいろとたいへんなことがあったにちがいない。

しかし、最後まで見て心に何が残るかというと、やはり脚本の力は偉大だということだ。このドラマは、大事な人が亡くなるという出来事に我々がどう向き合っていくべきかという問いに、一つの模範的な解答例を示してくれていると感じた。

徐譽庭はきっとこのドラマのあともこのテーマを温め続けていて、《誰先愛上他的》がその延長線上に現れたのだろう。

いよいよ3月には《出境事務所》に挑戦する予定。

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