親の期待に答えようとする中国人留学生

アンケート調査をする授業で、ある中国人留学生が「ストレス」について日中の大学生の差について調査した。何にストレスを感じるかという質問に、日本の大学生が全くストレスを感じていないのに、中国人留学生が多くストレスを感じていたものがあった。それは「親の期待」だった。調査を行った留学生は日本で母親と同居していて、親の期待に日々ストレスを感じているという。

中国から別の留学生で、親の希望に従って学部を選んだが、どうしても学科の内容に興味が持てず別の大学に入りなおしたという人もいた。どうも、最近の中国人留学生は親の言うままに人生を歩んでいる人が一定数いるように感じる。

ここ20年の中国からの留学生の変化は非常に大きい。

90年代の中国人留学生は日本で必死にバイトして稼いで国の両親に楽をさせたいという人が多かったが、今や中国の両親は豊かになり、留学生にとって大事なスポンサーである。当然親の期待には応えなくてはならないのだろう。

親が過干渉か無関心かは家庭による差が大きく、子がどう感じているか教室で留学生に手を挙げてもらっただけでも、真っ二つに別れた。

日本の親が子どもに全く期待していないと言えばうそになるが、ストレスを感じさせるほどに期待する家庭というのは、よほど階層の高いうちなのではないか。それでも、就活や結婚となるといろいろと口出ししてしまう親も増えるように思う。

中国でも祖父母に子どもを預けて出稼ぎに行くという親もいれば、子どもに英才教育を熱心に施してきた親もいる。どこの国も十把ひとからげにどうこう言うことはできない。

しかし、この話を聞いて、私自身がどうかということを考えると、そこまで息子や娘に成功してほしいという期待はない。将来どんな職業に就こうと誰とどこで結婚しようと、本人が幸せだと感じていればそれでいいと思う。少しでもそのための手助けが必要なら手を貸すよ…その程度のことだ。

以前、北欧の高齢者は子どもに面倒を見てもらうことがなく、ほとんどの人が高齢者施設に入るらしいというのを、残念なことのように聞いていたが、現在では日本もうちですべての面倒を見なくてはという風潮はなくなってきた。無理に家族を背負うことで誰かがストレスを感じるなら、いっそ家族なんてものにこだわる必要はないのである。

誰も犠牲にしない。すべての人に、幸せな生活を送る権利がある。アジアの血のつながりは濃いが、そこに抑圧があるとよくない。家族とどの程度関わるかについても「~ねばならぬ」ではなく、「~てもいい」ぐらいでよいと思う。

しかし、個人の自由を重視しすぎると年配の人たちは寂しいと感じるのだろう。私もその年配の中に入りつつある。さて、この先に待つものは?

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