Miss me? と I.O.U.

英国のテレビシリーズ『シャーロックSHERLOCK』は、アンドリュー・スコットAndrew Scott演じるジム・モリアーティーJim Moriartyが絶品だ。特に第2シリーズ第3話でロッシーニ『泥棒かささぎ』序曲を聞きながら優雅にロンドン塔のセキュリティーを破り、宝冠を強奪するシーンがたまらない。

このJim Moriartyのセリフで非常に印象的なものが二つある。一つは Miss me?(会いたかった?)もう一つは I owe you.(IOU)(お前に借りがある)である。ドラマを見た人はそれぞれもうどの場面かわかったと思う。

「あなたがいなくて寂しい」
(英)I miss you.
(仏)Tu me manques.
主語と目的語が英仏では逆という点は確かに興味深いが、英語のmissにせよ、フランス語のmanquerにせよ、どちらも動詞の意味は「欠く」である。

だが、中国語で《我欠你。》というと、I owe you.(お前に借りがある)の意味になる。
この《欠qiàn》には
1 借りがある
2 (抽象的なものが)足りない
の二つの意味があるが、実際に具体的なモノが不足しているときには《缺quē》という別の動詞を使うため、初中級くらいのレベルでは出てこなかった。それで、私は《欠》の漢字が中国で使われていないのだとすら思っていた。

それが、台湾ドラマを見始めると、よくこの《欠qiàn》に出くわす。借金以外だと例えば《欠揍啊,你。》丁寧に訳すと「殴られ足りないのですか、あなたは。」私の頭の中には「しばかれたいんか、お前は」というのが浮かぶ。《揍zòu》は「殴る」である。

それでは、I miss you.は中国語で何というかというと…《我想你。》これは漢字を見ただけでもある程度、意味が推測できる。やはり文化圏が近いということか。《想家》(うちが恋しい)のようにも使える。

だが、一番困るのはI miss you.のような構文で同様の意味を示す日本語がない点ではないだろうか。「恋しい」も「会いたい」も「いなくて寂しい」も日本語学習者にしたら使いにくい表現だろうなぁと同情する。

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