2018年米映画『ある女流作家の罪と罰』Can you ever forgive me?

ロンドンからの帰りの飛行機の中でなぜかこれを見ようと思った。批評家評価が異常に高かったからである。きっと通にはわかる芸術的な良さのある作品にちがいないと思った。

British AirwaysとJALの共同運航便だったが、この映画に日本語字幕はなく、音声の日本語吹き替えがあったので、日本語吹き替え音声、英語字幕で鑑賞することにした。仮に非常に軽い作品であっても、英語音声、英語字幕で鑑賞できる英語力は私にはない。今回はわからないという「もやもや」を抱えて鑑賞する気分ではなかったため、迷わず吹替えを選んだ。それは、ロンドンで何度となく英語のみの映画をNetflixで見て、眠りこけてしまったことで、英語には懲りていたというのもある。

この映画の率直な感想は、「華がない」である。主人公リー・イスラエル役を演じたメリッサ・マッカーシーは米国で売れっ子のコメディアンらしいのだが、私にとってはただの小太りのおばさんである。帰宅後少し調べてみたら、以前はもっと太っていたようだ。太っていることを武器にコメディアンとして成功したのかもしれないが、英語の意味もわからずビデオを見ていると苦しくないのかなと思ってしまう。アメリカではけっこういるというレベルなのかもしれないのだが。

親友のジャック・ホック役を演じたリチャード・E・グラントは洒脱でとてもいい役者だと思ったが、主人公二人がどちらも同性愛者で二人には恋愛のからみが全くない。純粋な友情、飲み友達でしかない。日本語の吹替え声優の声は彼の軽いちゃらんぽらんな感じのキャラクターをよく表していたと思うが、本人の声も聞いてみたかった。

この飲んだくれの年配の男女二人組が、あらゆる種類のタイプライターを手に入れて、手紙に気の利いたセリフを足しては古書店に売るという悪事に手を染める話である。なんか、地味。リー・イスラエルのかわいがっていた猫が死んだところはちょっとショックだったが。

批評家からの評価が高かったのはリー・イスラエルの毒舌ぶり、ジャック・ホックとの掛け合いのうまさのようなのだが、日本語吹替え音声ではきっとオブラートに包まれてしまっているのだろう。上手に翻訳してあるなぁとは思うところもあったが、全体としておもしろさが半減してしまっているのかもしれない。そもそもアメリカンジョークは私たちには笑えないものが多い。

捏造された手紙の表向きの書き手たちも、私にはどういう人物なのかイメージが描けず…おもしろさが今一つわからない。野口英世や原節子の手紙が出てきたっていうのなら、少しはイメージできるかもしれないが…。

というようなわけで、私にとって『ある女流作家の罪と罰』は、アメリカの批評家っていうのはこういう映画を高く評価するのね、という見聞を広めたに過ぎないというのが実際のところだ。

日本での劇場公開はなく、ネットでの配信とDVD発売だけだそうだ。確かにこれは一般の日本人にはおもしろさがわかりにくい映画だと思う。

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