小説『アウトランダー11 妖精の丘にふたたびⅠ』フレイザーと苺

海外ドラマ『アウトランダー』シーズン1~3をNetflixの1か月お試しで見たあと、シーズン4を見るすべがないので、小説を読むことにした。シーズン4にあたるのが、小説『妖精の丘にふたたびⅠ~Ⅲ』である。

ジェイミーとクレアの乗った船が西インド諸島からスコットランドへ帰る途中で嵐に遭い、ジョージアに流れ着くところでシーズン3が終わった。シーズン4の舞台は新大陸アメリカである。

小説も1767年6月チャールストンから始まる。ジェイミーはノース・カロライナに住む叔母ジョカスタのもとをめざす。ジェイミーとクレアたちのアメリカでの冒険譚からは、当時のヨーロッパからの入植者がどういう生活を送っていたのかがよくわかる。奴隷たちとの関りも興味深い。

一方、1969年のクレアとジェイミーの娘ブリアナとスコットンランド人歴史学者ロジャーとの恋愛からも目が離せない。しかも、予告編でちらっと見てしまったところによると、この二人、どうも18世紀のアメリカに来るらしい。あ~、気になってしかたがない。

ジェイミーの「フレイザーFraser」という苗字を聞くと、フランス語のfraise(苺)が頭に浮かんでしまって、なんで「苺」? と思っていたら、なんと本当に苺と関連があるということが、本に出てきた。

叔母ジョカスタの所有する土地がどこまででどういう土地なのか確かめに何日も旅をしている際、野生の苺が群生している森を見つけ、これはフレイザーの土地にせよとの「しるし」ではないかとジェイミーが考えるくだりである。

今我々が食べる苺と比べ、ずいぶん酸っぱいものらしいと書かれているが、赤い実がなっている森を想像するだけで素敵なイメージである。

この本を読んでいると、スコットランドがフランスとの関りが強いとなにかと感じさせられることがしばしばある。カトリックを信仰していたこととも関わるのだろう。ドラマ『クイーンメアリー』のメアリー・スチュアート(1542-1587)はスコットランド女王でありながら、フランス宮廷で育っている。たぶんヨーロッパ諸国の距離的な近さと派遣争いの歴史がまだピンと来ていないせいだろう。

そして、18世紀北アメリカの植民地に移住したスコットランド人の多さも、この話で初めて知ったことである。イングランド人にキルトやゲール語を禁止されたスコットランド人が先祖代々の土地を捨て、アメリカに入植していったのか。なるほど~と唸らされた。

歴史が浅いという点で、今までアメリカという国にはあまり魅力を感じたことがなかったのだが、少し見方が変わるかもしれないと思った。

『アウトランダー10 妖精の丘にふたたびⅠ』ダイアナ・ガバルドン

ドラマ『アウトランダー』のシーズン4の放送がHulu や AXN で始まっているらしいが、Netflixで見られるのはシーズン3まで。仕方がないので、この機会に小説を読んでみることにした。 “『アウトランダー10 妖精の丘にふたたびⅠ』ダイアナ・ガバルドン” の続きを読む

『アウトランダー』シーズン2第5話まで

シーズン2の舞台はフランスパリ。登場人物の服装も街並みも華やかで、大自然に囲まれて素朴な生活を営んでいたスコットランドのときとは大違い。

フランス語が使われる場面がよくある。クレアのフランス語はとてもきれい。フランス国王にも褒められていた。ジェイミーはそれほど達者というわけではないが、まあまあできる。マータフはわかるみたいだけど、一切話さない。フランスは臭いだの文句ばかり言っている。

クレアとジェイミーに留守の間、屋敷とワイン商を任せて、フランスを離れたおじさんが実はけっこう苦しそうにフランス語を話していた。長い間フランスにいたくせに…と思った。

スリの少年ファーガスと天然痘騒ぎで船を燃やさざるを得なかったサンジェルマン伯爵はフランス人。でも、もちろん英語のセリフも多い。サンジェルマンはフランス語、ジェイミーは英語で話すという奇妙な会話があった。お互い仲がいいという役柄ではないので、好きなことばで話せはよいのだ。

パリの薬草店主にドミニク・ピノンが出ていた。『デリカテッセン』や『ロスト・チルドレン』などジャン=ピエール・ジュネの作品の常連だったので、なつかしい。『アメリ』にも出ていた。独特の風貌が薬草店主にぴったり。

第5話では、ジャック・ランデルが復活。ピンピンした姿でベルサイユ宮殿でクレアとジェイミーの前に現れる。フランス語はあまり得意でないという設定らしく、フランス国王の前で恥をかく。この間まで血みどろの戦いを繰り広げていたとは思えない、のんきな雰囲気で現実味がない。

ジェイミーがジャック・ランデルに決闘を申し込むが、クレアに阻まれるという場面があった。クレアが20世紀に生きる夫フランク・ランデルのためにあと1年待てと言う。この心境がよく理解できない。自らの手で葬りたいから、ジャック・ランデルが生きていてよかったと喜ぶジェイミーもよくわからない。

それにしても、ジェイミーの巻舌/r/。このドラマのために練習したのだろうか。それとも、ベタベタのスコットランド訛りで話すと自然にこういう発音になるのだろうか。普段の英語を聞いてみたいものだ。

英ドラマ『アウトランダー』20世紀の人間が18世紀で生きのびられるか

第1シーズン第7話までしか見ていないのだが、第2次世界大戦直後の時代を生きていたイングランド人の女性が18世紀のスコットランドで生き延びているなんて奇跡としか言いようがない。クレアはすごい。 “英ドラマ『アウトランダー』20世紀の人間が18世紀で生きのびられるか” の続きを読む