村上春樹『騎士団長殺し』騎士団長のことばづかいの効果

すでに刊行から2年以上経っているが、やっと村上春樹『騎士団長殺し』を読んだ。身長60㎝くらいの自称「イデア」だという独特のキャラクター「騎士団長」のことばづかいがおもしろい。雨田具彦という画家が描いた強烈なメッセージを含んだ日本画に登場する飛鳥時代の衣装に身を包んだ人物だという。誰かが絵にしてくれないかなと思うが、私自身まだ頭にこのキャラクターの像をうまく描けずにいる。 “村上春樹『騎士団長殺し』騎士団長のことばづかいの効果” の続きを読む

「✕」は「ぺけ」「ばつ」?:「ぺけ」の語源と使用範囲

国立大学の大学院生対象の日本語の授業でのことである。

出席できない日に「✕」をつけてください。

という文章を何気なく読み上げると、一番前に座っていた一人の中国人の女子学生が「先生今『✕』を何と言いましたか」と尋ねてきた。 “「✕」は「ぺけ」「ばつ」?:「ぺけ」の語源と使用範囲” の続きを読む

温又柔『台湾生まれ 日本語育ち』の「ママ語」

温又柔の『台湾生まれ日本語育ち』では、台湾人である自身の母親が話す日本語・北京語・台湾語がちゃんぽんになったことばを「ママ語」と言っている。

子どもの頃はお母さんの日本語には変なところがいっぱいあって恥ずかしいと思っていたらしい。成人した今では、そういう日本語も含め、北京語に台湾語が混じるママ語を愛しくてたまらない、母親独自の言語と捉えている点に共感した。 “温又柔『台湾生まれ 日本語育ち』の「ママ語」” の続きを読む

閩南語と北京語の切換えの不思議―陳竹昇@台湾名人堂―

2017年12月24日放送の《台湾名人堂》(台湾のインタビュー番組)に出演している陳竹昇を見た。

《阿莉芙》(2017)という映画に女装して出て、金馬奨で助演男優賞を受賞したらしい。細くて小さい体つきにくりくりした好奇心満々の眼が印象的である。 “閩南語と北京語の切換えの不思議―陳竹昇@台湾名人堂―” の続きを読む

「高所得者層は余裕で生活している」

学部留学生のレポートに現れたこの表現。

努力家の真面目な学生が書いたレポートで、テーマは『子どもの貧困』。

若者独特の俗語が、注意深く整えられた堅めの書き言葉が居並ぶ文体の中で、異様な匂いを放っているのが、私にはとても興味深く思えた。 “「高所得者層は余裕で生活している」” の続きを読む