2019年 映画『キャッツ』

これまでミュージカルを見に行くという習慣がなく、一度も見に行ったことがなかった『キャッツ』。映画版はあまり評判がよくなく躊躇していたのだが、ついに重い腰を上げることに。なんとしてでも見なければと思った理由はただ一つ。2019年2月にロンドンまでロイヤルバレエを見に行った際、生 Steven McRae スティーブン・マックレーを見損ねたからだ。

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アウトランダー23『遥かなる時のこだまⅢ』読み終わってしまった…

ドラマ『アウトランダー』を見始め、シーズン3までしか見られなかったので、シーズン4からは ダイアナ・ガバルドンの小説4作目『妖精の丘にふたたび』を読むことにした。そして、5作目『 燃ゆる十字架のもとに 』、6作目『 炎の山稜を越えて 』、7作目『遥かなる時のこだま』と読み進めた。それを、つい先ほど読み切ってしまったのだ。

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Sherlock 2-2 バスカヴィルの犬における ‘cell’ の使用について

携帯電話が 日常生活に不可欠なデバイスとなって久しい 。アメリカで cell phone、英国で mobile phone と言うと聞いていたが、日本語で「携帯」と省略されるように ‘cell’ や ‘phone’ などと呼ばれるようになってきているという。シャーロックのシーズン2の2「バスカヴィルの犬」の中で、フランクランド教授がシャーロックの携帯番号を尋ねるのに cell number と言ったために「アメリカ人ですね」と言われる場面がある。この人物は1970年代にアメリカにいたが、このイギリスの架空の地名であるバスカヴィルには少なくとも20年以上住んでいるようだ。

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英国ドラマ『高慢と偏見』(1995)コリン・ファース主演

ずっと以前から見たいと思っていたコリン・ファースの出世作『高慢と偏見』がHuluにあり、全6話を視聴した。DVDを買おうかと思ったこともあったが、価格の高さに躊躇していた。

映画『ブリジット・ジョーンズの日記』(2001)を見てから、コリン・ファースが気に入っている。『ブリジット・ジョーンズの日記』の原作者がドラマ『高慢と偏見』の大ファンで、彼女のたっての願いでコリン・ファースがマーク・ダーシー役に起用されたのは有名な話である。いつかオリジナルのミスター・ダーシーを是非観なくてはと思っていた。

さて、『高慢と偏見』の感想である。

まず、女性たちの服装に面食らった。18世紀が舞台の『アウトランダー』でコルセットをつけている女性たちを見慣れていたので、1800年前後のイギリスの女性たちがコルセットをつけていないのに驚いたわけだ。ジェーン・オースティンの小説『高慢と偏見』は1813年刊行だが、1796-97年にかけてそのもととなった「第一印象」という作品が書かれている。

ドラマに登場するのは胸の下に切り替えがあり、あとはふくらみのないストンとしたスカートがあるだけのワンピースである。サマードレスのようだと言えばまだ聞こえがよいが、まるでネグリジェ(寝間着)のように見えてしまう。

1800年前後にフランスでコルセットを外したファッションが流行したのを取り入れているのだろう。時代考証がきちんとなされたうえでの衣装選択だと思われる。現にナポレオンの妻ジョゼフィーヌ・ド・ボアルネの肖像ではコルセットをつけていない。

最初は田舎の女性たちがうちでリラックスしているときだけかと思ったが、そういうわけでもなさそうだ。改まったディナーの場面や舞踏会でも同じようなドレスだった。都会育ちのお金持ちの女性たちは若干おしゃれにはなるが、それでもコルセットはしていない。

コリン・ファースは若い。当時36歳。最初の方は仏頂面ばかりだったが、リジーへの気持ちを自覚し始めてからは徐々に表情が柔らかくなっていく。特にリジーがピアノを弾きながら歌っているシーンではニヤニヤに近い、何とも楽しそうな笑みを浮かべており、こちらまでうれしくなってくる。最後の結婚式のあとリジーと馬車に乗るシーンでは相好をくずして大笑いしていて、こんな顔は初めて見たと思った。

ミスター・ダーシーが湖に飛び込むシーンが話題になったようだ。恋に悩む男性が水に飛び込むのはよくありがちな展開だが、現代の感覚からすると、そんなにいっぱい服着たまま飛び込まなくても…と思った。

リジー役のジェニファー・イーリー Jennifer Ehle は美人だとは思うが、かなりぽっちゃりしていて、若奥様のような貫禄がある。途中から渡辺えり子に見えてきて困ったが、笑顔が素敵で印象が良い。

しかし、時代劇とは言え、1995年のドラマにはやはりあちこちに古さを感じさせる部分がある。ドラマに合わされる音楽がどうもイケてない。田舎っぽさを出す必要がある部分もあるとは思うが、故意にやっているとは思えない陳腐さを感じる。21世紀のドラマを見慣れてしまうと時代を感じてしまう。

ただ、乗馬シーンや馬車が出て来るあたりや、古めかしい立派なお屋敷が多数出て来るのには感心した。お屋敷の中には痛みが激しいものがあり、少々残念ではあったが、物語の中の当時はそういうものだったのかもしれない。

このドラマの魅力は原作に忠実な生き生きとした人物描写だ。多少の誇張はあるにせよ、反面教師とすべき部分が多くあった。口うるさい母親やKYな牧師のようにはなるまいと我が身を戒めつつ、視聴を終えた。

ドラマ『アウトランダー』シーズン4:小説とドラマの差

小説を原作とした映画がさまざまに作り変えられるのには2時間という尺の都合上、仕方があるまいと思っていたが、「ドラマでもこうなってしまうのか~」とうならされたドラマ『アウトランダー』のシーズン4。 “ドラマ『アウトランダー』シーズン4:小説とドラマの差” の続きを読む

小説『アウトランダー11 妖精の丘にふたたびⅠ』フレイザーと苺

海外ドラマ『アウトランダー』シーズン1~3をNetflixの1か月お試しで見たあと、シーズン4を見るすべがないので、小説を読むことにした。シーズン4にあたるのが、小説『妖精の丘にふたたびⅠ~Ⅲ』である。

ジェイミーとクレアの乗った船が西インド諸島からスコットランドへ帰る途中で嵐に遭い、ジョージアに流れ着くところでシーズン3が終わった。シーズン4の舞台は新大陸アメリカである。

小説も1767年6月チャールストンから始まる。ジェイミーはノース・カロライナに住む叔母ジョカスタのもとをめざす。ジェイミーとクレアたちのアメリカでの冒険譚からは、当時のヨーロッパからの入植者がどういう生活を送っていたのかがよくわかる。奴隷たちとの関りも興味深い。

一方、1969年のクレアとジェイミーの娘ブリアナとスコットンランド人歴史学者ロジャーとの恋愛からも目が離せない。しかも、予告編でちらっと見てしまったところによると、この二人、どうも18世紀のアメリカに来るらしい。あ~、気になってしかたがない。

ジェイミーの「フレイザーFraser」という苗字を聞くと、フランス語のfraise(苺)が頭に浮かんでしまって、なんで「苺」? と思っていたら、なんと本当に苺と関連があるということが、本に出てきた。

叔母ジョカスタの所有する土地がどこまででどういう土地なのか確かめに何日も旅をしている際、野生の苺が群生している森を見つけ、これはフレイザーの土地にせよとの「しるし」ではないかとジェイミーが考えるくだりである。

今我々が食べる苺と比べ、ずいぶん酸っぱいものらしいと書かれているが、赤い実がなっている森を想像するだけで素敵なイメージである。

この本を読んでいると、スコットランドがフランスとの関りが強いとなにかと感じさせられることがしばしばある。カトリックを信仰していたこととも関わるのだろう。ドラマ『クイーンメアリー』のメアリー・スチュアート(1542-1587)はスコットランド女王でありながら、フランス宮廷で育っている。たぶんヨーロッパ諸国の距離的な近さと派遣争いの歴史がまだピンと来ていないせいだろう。

そして、18世紀北アメリカの植民地に移住したスコットランド人の多さも、この話で初めて知ったことである。イングランド人にキルトやゲール語を禁止されたスコットランド人が先祖代々の土地を捨て、アメリカに入植していったのか。なるほど~と唸らされた。

歴史が浅いという点で、今までアメリカという国にはあまり魅力を感じたことがなかったのだが、少し見方が変わるかもしれないと思った。

『アウトランダー10 妖精の丘にふたたびⅠ』ダイアナ・ガバルドン

ドラマ『アウトランダー』のシーズン4の放送がHulu や AXN で始まっているらしいが、Netflixで見られるのはシーズン3まで。仕方がないので、この機会に小説を読んでみることにした。 “『アウトランダー10 妖精の丘にふたたびⅠ』ダイアナ・ガバルドン” の続きを読む