「お茶くみ」をめぐるロールプレイ:こんなに盛り上がるとは!

ビジネス日本語の授業で先週扱った「お茶くみは誰の仕事?」(2018/10/24)について今日はロールプレイをすることになっていた。

キランさんというインド人IT技術者の社員(入社2年目)が慣れないお茶くみを頼まれ、お茶をこぼしてしまう。その日はたまたま受付の人がいなかった。私の仕事の範囲ではないと気が進まない様子だったのが気になり、客が帰ったあと課長がキランさんの話を聞くというロールプレイだった。

実はこのクラスには一人遅刻してばかり来る困った学生が一人いる。前期は宿題をほとんど出して来なかったため、不合格にした。

ただ、この人はわからないことは素直に、そして積極的に質問して来るし、しっかりと大きな声で発言もするので教室での印象はなかなかいい。授業時間外の課題をすることにどうも問題があるのだ。この人を今仮に「王さん」と呼ぶ。

さて、問題のロールプレイである。外国人社員キランさんの役をするのはそれほどハードルが高くないが、課長の役をするのが難しいと学生たちが口々に言う。何と言って説得すればいいか頭を悩ませていた。

このタイプの価値観の入るロールプレイは、会話例などはなく、自分のことばで演じなければならない。前回の話題のときはみんなもぞもぞ話して自信なさそうだった。

今回の話題も7つのペアのうち、3つ目まではもそもそした話し方が勝っていた。

そして、遅刻王「王さん」の番が回ってきた。彼は椅子を出してふんぞり返って座った。相手の「林さん(仮名)」はドアの外からノックする真似。二人はとても真剣に演じていた。偉そうに諭そうとする課長と言いたいことを我慢するキランさんが見事に演じられていた。最後にはキランさんが怒って日本語ではないことばで課長を罵って出て行った。

文法などの細かい間違いはあったが、立派な寸劇になっていた。聞いていた人たちの間から拍手が起こった。

さあ、そのあとである。続く3グループがこれを見て発奮。すばらしいロールプレイが続いたのである。最後の女性課長に至っては私の言いたいことをすべて代弁してくれるという、涙が出そうなほど素敵な課長だった。

このクラスの人たちがこんなに熱の入った演技をするとは! 完全に見損なっていた。

彼らの意欲に火をつけたのは私ではない。「王さん」だ。彼の様子がみんなに火をつけた。

「王さん」は今日初めて話した相棒「林さん」と意気投合し、授業終了後連絡先を交換。それを微笑ましく見守る周りのクラスメート。今までにないクラスの盛り上がりに胸が熱くなった。

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