ビジネス日本語の授業で使用している教科書には「企業文化について考えよう」というのが各課についている。
第2課のケーススタディーは「お茶くみは誰の仕事?」というタイトル。IT技術者として最近入った外国人社員(私)が来客用にお茶を入れるよう頼まれた。受付の人がそのとき席を外していたためである。私は慣れないのでお客の前でお茶をこぼしてしまった。すぐに謝ったが、お茶を出すのは私の仕事じゃないのにと思うと納得が行かない気持ちになった、というものである。
これを読んで、2~3人のグループで少し話し合ってもらった。すると、「それはIT技術者の仕事ではないから私だったらやりたくない」という人は16人中たった1人で、あとの人は「新人なのだから仕方がない」という意見だった。
ちなみにこのクラスはたまたま全員中国人である。
「お茶くみをすべきだ」と言った一人は「会社はみんなで協力して仕事をするべきだから、後輩や下の人がそういう仕事はやるべきだ」と説明した。
このクラスの人たちは理系の大学院生でゼミの上下関係などに慣れているからこういう考え方をしたのかもしれない。それにしても、新人だとか、後輩だとか地位が低いということが雑用をする大きな理由になるようだった。
日本だとこの話題は職場における男女差別の話になるのが常だが、その点は彼らには違和感があるようだった。
中国では女性がお茶くみをするというわけではないらしい。思わず、外国人が日本の会社にどんどん入って、こういう習慣も変わっていけばいいのにと思った。さまざまな価値観が入ってくることによって、公平で合理的な考え方が根付けばありがたい。
ただ、中国では上下関係があまり強くないと思っていたが、それは言語的に敬語を使うようなことがないというだけで、誰がどういう仕事をするかについては上下関係が強く働くようだ。
最近は中途採用や高齢者の再雇用などが増え、日本でも年齢と上下関係が必ずしも関連しないことがある。私としては年齢や性別に関わらず、みんなが対等に尊重し合いながら仕事できればよいなと思う。
村野節子他(2012)『上級レベル ロールプレイで学ぶビジネス日本語 グローバル企業でのキャリア構築をめざして』スリーエーネットワーク
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