日本語の「展示(てんじ)」と中国語の《展示 zhǎnshì 》

空手をやっているという台湾からの交換留学生がスピーチで「ちょっと展示(てんじ)してもいいですか」と言いながら、前でテコンドーと空手のちがいをやって見せてくれた。

私はこの「展示(てんじ)」という表現がすごく気になってしまったので、全員のスピーチが終わってから、次のように説明した。

日本語の「展示」には美術館や博物館のように絵や彫刻など動かないものを他の人に見てもらうために置いておくという意味しかない。目の前で動くものを見せる場合は「実演」と言った方がよい。

「デモンストレーション」というのが最近の流行りかとも思うが、とりあえず中国語母語話者の頭に入りやすい漢語「実演」を紹介した。

あとで調べてみると、中国語の《展示 zhǎnshì 》は「はっきり示す」という意味が第1義で、そこに示されるものは抽象的なものを含むようである。

以下にWeblioの白水社の『中国語辞典』《展示 zhǎnshì 》の用例を引用する。

1 作者通过爱情展示主题。
=作者はロマンスを通してテーマをはっきりと示す.
2 《阿Q正传》展示了辛亥革命前后农村的复杂背景。
=『阿Q正伝』は辛亥革命前後の農村の複雑な背景をはっきりと示している.
3 展示出劳动人民的智慧。
=勤労大衆の知恵を明らかに示している.
4 他的才能没有得到充分的展示。
=彼の才能は十分に発揮できる場が得られなかった.

日本語の「展示」の意味はここまで広くはなく、中国語の《展示 zhǎnshì 》は「示す」と言うべきのようだ。ただ、「はっきり示したいと思います」と言って彼がテコンドーと空手の実演に入るのも妙で、あの場面では「実演します」か「実際にやってお見せしたいと思います」のように言ってほしいところだ。

では、日本語の「展示(てんじ)」を中国語では何と言っているのかというと、《展出 zhǎnchū 》が最もカバーする部分が近いように思う。

長らく気になっていた「てんじ」と《 zhǎnshì 》についてきちんと調べる機会が持ててよかった。空手の君に感謝である。

ちなみに彼のスピーチによると、台湾ではテコンドーの道場はあちこちにあるが、空手はけっこう認知度が低く、すぐテコンドーと間違われるのだそうだ。

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