バレエダンサーと足の骨格

友人の娘さん(中3)がプロのバレエダンサーを目指し、できれば日本の高校へは行かず、ヨーロッパのあるバレエスクールに行きたいと思い、そこのサマーコースに参加した。サマーコース中にオーディションがあり、成績が良ければ正式なコースへの入学許可が下りる。

ところが、初日に母親(私の友人)のところへ「もうバレエを辞める」というメールが来たという。

よくよく尋ねると、骨格がいけないのだと言う。私にはその違いがまだ今一つ明確につかめないのだが、本人曰く、足のラインが美しくないのだそうだ。

プロになれるならと、ありったけの情熱を傾けてバレエにすべてを捧げてきたのに、報われないとわかった以上、続けるのは精神的に耐えられない、別の道に進もうと思うというのである。

本人がヨーロッパへ渡ったことで、自分に決定的に足りないものに気付き、そういう決断をしたのだから、周りは受け入れるしかない。

しかし、なんという過酷な世界だろう。センスや音楽性、柔軟性や筋力、技術などは、磨けばある程度上達する余地がある。しかし、骨格は変えられない。しかも、彼女の場合は「骨格」と「将来性」の評価が低く、あきらめるしかないと判断したのだという。

彼女の周りには「すばらしい足」を持ちながら、バレエを辞めていく人が何人もいたという。「辞めるなら、その足を私のと換えてよ」と何度も思ったと言う。

本当に努力家で、彼女の踊りにはバレエが好きで好きでたまらないという気持ちがあふれていた。とても魅力的なお嬢さんだけに残念でならない。

バレエダンサーは好きで志した人がみんななれるというものではない。重々承知してはいたのだが、その現実が目前に突き付けられた今回の出来事、一人の母親としても、バレエファンとしても衝撃を受けた。

国内で3本の指に入り、向こうから請われて留学しても、成功が約束されているわけではない。世界各国のバレエ団で活躍されているバレエダンサーは、すさまじい努力をされたとは思うが、本当に骨格的、体格的に非常にラッキーな人たちでもあるのだ。

翻って、バレエやスポーツ以外の進路を考えると、文系であれ、理系であれ、本当にそれが好きで好きでたまらないんだったら、いずれ道が開けてくるのではないかと思えてくる。

努力でなんとかなるはずのことに手が届かないと嘆くのは、実はそれほど好きなわけではないか、ただの甘えなのだと言われている気がした。

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