子どもの言語習得能力の高さには驚かされる。時に起こす、過剰一般化over-generalizationには非常に興味深いものがある。
シンデレラに出てくるいじわるな後妻を「ままはは(継母)」と呼ぶが、「まま(継)」のつく次のような語があることはあまり広く知られていないのではなかろうか。
「ままちち(継父)」
「まませ(継兄)」
「まましい(継しい)」
「まま(継)」はかなり古い和語のようである。調べてみると、山のように「まま(継)」のつく語が出てきた。
今の子どもが「ままはは」という言葉を聞くと、その対義語は「ままちち」とはならず、「ぱぱちち」となりそうだ。
ママ/パパ
母/父
ママ+はは ⇒ ままはは(継母)
パパ+ちち ⇒ ×ぱぱちち
⇒ ままちち(継父)
パパママが普及してすでに久しい。
10年前ですら小児科に子どもを連れて行くと、小児科のおじいちゃん先生や看護師さんに
「ママ、ちょっとここに赤ちゃん寝かせてあげて」
などと言われて、面食らったものである。
「お母さん」と呼びかけられるものと思っていたので、「えっ? ママですか」と違和感を持った。
我が家では「パパママ」がなにやらこっぱずかしく、もっぱら「お父ちゃん」「お母ちゃん」である。
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うちの息子が5歳くらいの頃であろうか。玄関まで訪ねてきた新聞の勧誘員に
「新聞のことは夫に言ってもらわないと、私の一存では決められない」
と説明して、とりあえずお引き取り願った。
すると、その一連のやりとりを横で聞いていた息子が唐突にこんなことを尋ねる。
「お母ちゃんは『おっか』?」
「はあ? なんでお母ちゃんが『おっか』なん?」
全く何のことがさっぱりわからず、首を傾げた。
すると、息子曰く、
「お父ちゃんが夫やったら、お母ちゃんは『おっか』とちがうん?」
やっと息子の言いたいことがわかった私は、なんとうまく考えたことかと大笑いした。
おとうちゃん ⇒ おっと(夫)
おかあちゃん ⇒ ×おっか
⇒ つま(妻)
息子は「おとうちゃん」の初めの「おと」をとって「おっと」と言っているのだと考えたらしい。だから、「おかあちゃん」と初めの「おか」をとって「おっか」となるはずだ、と。
ことばは対称的になっているものもあるけど、そうではないものも意外と多いのだよ。
子どもは意外な法則性を導き出し、試してみる。これを試してみるか、試さないかの差は大きい。失敗から人は多くのことを学ぶのだ。試してみないことには、何も始まらない。「学ぶ」ためには、「試してみる」必要がある。
私が息子を大いに誉めたことは言うまでもない。