エッフェル塔と東京タワー

フランスからの学生を相手に2000年頃サマーコースを教えていたころのことである。

「パリにあります。とても有名です。背が高いです。」で答えを考えるようなクイズをしていたときだろうか。クラス中の学生が La tour Eiffel を日本語で何というのか、どうしても知りたくなってしまった。Eiffel tower と英語でトライしてみる学生も現れた。

残念ながら「エッフェルタワー」とは言わず、「エッフェル塔」と言うのだと答え、この、最後の「塔(とう)」の部分が tower の意味だと説明した。

そして、数日後。

最後の週末に東京へ行ったという学生が現れ、みんなでどこへ行ったのか質問した。すると、「とうきょうとー」

しばらく意味がわからず、「東京都」? と思ったが、どうも彼が言いたいのは「東京タワー」にのぼったということだった。

本当に頭のいいまじめな学生はきちんと以前話した「塔(とう)」は tower を表す日本語だと覚えているのである。

だが、またしても残念。こちらは「塔」は使わず「東京タワー」。

学生さんの反応を待つ前に私がうなってしまった。なぜ「エッフェル」のあとに「塔」が来て、「東京」のあとに「タワー」が来るのか。重箱読み、湯桶読みを彷彿とさせるこの節操のなさ。

おそらく時代の影響かと思われる。

エッフェル塔は1889年パリ万国博覧会のために建設された。

東京タワーは1958年12月23日竣工。

ただ、東京タワーに関しては名称が一般公募されたとのことで、「昭和塔」「日本塔」「平和塔」と「~塔」が多くを占めたらしい。だが、徳川夢声の一声で「東京タワー」に決まる。

京都ですら、あのろうそくのような建造物を「京都タワー(1964年開業)」と言っているのだから、「東京タワー」を責められた義理はない。一重にエッフェル塔が、日本のタワー建設ラッシュにさかのぼること70年という古い時代のものだからであろう。

1912(明治45)年にエッフェル塔に似せて建てられたという「初代通天閣」は「タワー」などという外来語とは無縁である。

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