中国ドラマ《老男孩》第14話まで 「辅导」

《老男孩》から目が離せない。萧晗の親友周洲の母、丁芳茹(倪虹洁)が不気味だ。

英語教師である林小欧(林依晨)に息子周洲の補習《辅导》を頼みに来たあたりから怪しくなって来た。ただの心配性の母親ではない。始めはこれが、中国の過干渉な母親像の典型なのかと思いながら見ていたが、じわじわと常軌を逸して行っている。なかなかうまく演じられていると思う。

それにしても、学校の先生にお金を渡して家庭教師をしてもらうの、今でもまだあるのか~。8、90年代は当たり前だったが、このドラマによるとさすがに現在は建前上禁止されているらしい。

林小欧は、学校には《辅导》禁止規定があるため、周洲の家に行って補習を行うが、お金は受け取らないと言った。だが、周洲の母親はこっそり林小欧のバッグにお金を潜ませる。あとで気づいた林小欧は息子周洲を通じて《辅导》代の入った封筒を返そうとするが、母の元には届かず、どうも子どもの小遣いになってしまいそうである。あーあ、もっときちんとしておかないと、とハラハラする。

********************************

1989年2月北京外国語学院(当時)に4週間の短期留学した際、私は一人の中国語の先生に教わった。本来はドイツ語の先生らしい。落ち着いた話し方の知的な女性だった。日本人大学生ばかり6人の中級クラス、本当に短い留学だったが、この先生のおかげで私たちの中国語力は飛躍的に伸びたと感じた。

特に仲良くなった同じクラスで、寮でも同室だった女子学生とともに、私はこの先生に《辅导》をお願いした。留学に付き添って来た日本人コーディネーターのアドバイスで、そういうシステムがあるのを知り、3,4回《辅导》を受けたと記憶している。

私たちの寮の部屋へ先生が来る。教室で習うのとはまた違った雰囲気で、でも非常に有意義な時間だった。このころはまだ日本円が強く、私たちにとっては非常に安い費用でこのような授業が受けられたのは非常にラッキーだったと思う。

先生にとっても、この外国人相手の《辅导》は非常に割のいい臨時収入となるらしかった。当時、先生の給料は非常に低く、こういう《辅导》をしないととても食べていけないとも聞いた。

だが、やはりこれは変な制度である。学校の正規教員が授業外で学生の自宅を訪ねて個別指導を行い、報酬を受け取る。私たちの場合は試験や単位に絡むことはなかったが、一般の学校だと公平性に欠けると問題になるだろう。なぜ教室に残して補習しないのだろう。

しかし、建前は建前として、現実はこのドラマが示すように、大都会上海ですら、いや、大都会だからこそ、まだこういうシステムが脈々と息づいているのではないだろうか。昔からの習慣を駆逐するのはそう簡単なことではない。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です