2018年2月10日から二泊三日で香港旅行に行った。金鐘Admiraltyでトラムを待っていたとき、なかなか来なかったので、しげしげとトラムの料金表を眺めていた。すると、《長者》の文字。大人より安い。「あー、高齢者のことだ!」と納得した。昔はこんな言い方していなかった。日本に帰って調べてみることにした。
言い換えが始まったのは予想以上に前のことだった。
香港では1979年に11月第3日曜と制定された《老人節》(敬老の日)を1993年から《長者日》と言うようになったらしい。
香港社會服務聯會The Hong Kong Councile of Social Service
香港は世界一の長寿を誇る街である。そして、よく言われるのが香港の高齢者たちは非常に活発で、余生を謳歌しているということだ。
それはさておき…日本でも「老人」から「高齢者」へ言い換えが進んだが、この《長者》は「年長者」という意味なので、日本語では「シニア」に相当しそうだ。
「高齢者 割引」でググると、「シニア割引」「シニア特典」に交じって、「JAL当日シルバー割引」!
そういえば、「シルバー」も以前はよく使われていた。現在では「シニア」を多く見かけるようになった。
台湾や中国でも《長者》と言い始めているのか調べてみたが、依然として《老人》が主流のようだ。
旧暦九月九日の重陽の節句を《老人節》と呼び、《模範老人》を表彰している台湾の新聞記事を発見した。
聯合新聞網 52屆老人節 父女首次同獲獎 2017-10-08 19:01台灣醒報 記者林晏如╱台北報導
そもそも、この《老人》ということばに社会がネガティブな印象を植え付けてきたかどうかが問題なのであって、《老人》が敬われている現状があればことばを言い換える必要はない。
日本語の「年寄り」ということばは自嘲的に言うこともできるが、「お年寄り」と尊重した言い方もできる。
3月29日の貴乃花親方降格のニュースでは日本相撲協会の臨時「年寄」会議が俄然注目を集めた。理事会の一番下の位が「年寄」だと言う。その上には主任、委員、役員待遇委員、副理事、理事、理事長とあり、位が上がっていくらしい。上の方の階級はどこの組織にも使われそうな一般的な漢語であるのに対し、最下級の「年寄」だけが、相撲協会の独特さを体現している。
理事にまでなっていた貴乃花親方が三か月で5階級降格し、45歳で「年寄」へ…ここに言い換えの波は及ばないのだろうか。