小六の息子が戦国武将マニアで、夫と古戦場巡りにいそしんでいる。中学生になるのだから、そろそろ親なしで遠出してもいいのではないかと、同じく戦国武将好きの友だちと姫路城へ行くことになった。
エレベーター付き鉄骨鉄筋コンクリート造のお城が多い中、姫路城は江戸時代初期に建てられた建物が残り、国宝にも指定されているホンモノである。しかも、JR姫路駅を降りればもう見えているという立地の良さを考えてもこの機会に是非行って来いということになった。
せっかく姫路まで行くのなら、お城以外にも何か観光できないかと考えていたときの話である。
「姫路動物園に行ったら?」ということになり、「入場料はいくらだろう?」という話になった。
「普通小学生はタダやろ」
「いや、よそから来た小学生は無料にしたらあかんのちゃう?」
「そんなん、姫路の子やないってどうやって調べるん?」
「そら、もちろん、『手袋はしますか、履きますか』って訊くんやん」
「そしたら、『雨はぴりぴり降りますか』とか『ニャーと鳴く動物を何といいますか?』とかも訊けるなあ」
出てくる出てくる、播州弁話者の見分け方。
加古川出身の夫は「手袋をする」ではなく「履く」という。
こんなことを言っているのは大阪ではうちの夫だけだと思っていたら、保育園の園長先生が同じように
「みんな、手袋履きや!」
と言っていて、「園長先生も『手袋履く』んですか。うちの夫もです」と盛り上がったことがある。
霧雨のような雨が降っていると「雨がぴりぴりしてる」と言う。
「猫」のアクセントは大阪京都では東京と同じ頭高アクセントなのだが、播州弁では②型「低高(低)」である。
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最近発見した、隠れた播州弁らしき、夫独特の言葉遣い…
「だれや、床をベタベタにしたのは」
子どもが庭の水やりをすると、風呂場から玄関まであちこち床に水をこぼす。それに気付いたときに夫が言う。
濡れたタオルなどを見ても、ベタベタと言う。油がついているとかではなく、ただの水で濡れているだけなのに。
「この台布巾、ベタベタや。そっちで絞って。」
どうも夫は「濡れているさま」を形容するのに「ベタベタ」を使用するのである。
だが、「ベタベタ」はどちらかというと「粘着性」を形容するものではないかと私は思うのだ。
『デジタル大辞泉』によると、以下のように書かれている。
べたべた
1⃣[副](スル)
1 物が粘りつくさま。「汗でシャツがべたべた(と)くっつく」
2 機嫌をとったり、甘えてまといついたりするさま。「人前で男女がべたべた(と)する」
3 一面に塗りつけるさま。「おしろいをべたべた(と)塗る」
4 物を一面にはりつけるさま。「膏薬(こうやく)をべたべた(と)はる」
5 印などをやたらと押すさま。「朱印をべたべた(と)押す」
6 一面に書くさま。「壁にスローガンをべたべた(と)書く」
2⃣[形動]1⃣に同じ。「汗で体中べたべたになる」
夫の言う「ベタベタ」は私なら「ビショビショ」と言いたいところだ。
播州弁の「ぴりぴり雨」は一般的に知られているが、この「ベタベタ」の使い方も播州地方の方言ではないかと思うのだ。