台湾で話されている方言が聞き取れないとつまらない最大の理由:猪哥亮

先日、小6の息子がある本のタイトル『台湾生まれ 日本語育ち』を見てこう言った。

『日本語育ち』はおかしいやろ。『日本育ち」やんな、ほんまは。

私の答えは、こう。

そうやで。でも、あれっと思わせるところがこのタイトルの狙いやねんで。

温又柔様

日本語で育った台湾人であるあなたからすると不思議に思われるかもしれませんが、私はあなたがとてもうらやましいと思いました。中国語を何年も学習してきて、台湾ドラマもほとんど聞き取れるようになったつもりですが、台湾語が話されると途端にものすごい疎外感を感じます。いくらがんばっても届かない何かを感じるのです。

私には関西方言という立派な母方言があるので、方言の温かさやなつかしさがわからないではないのです。でも、日本語の標準語を学んだ人であれば、聞いて何もわからないということはありません。でも、台湾語はかなり唐突にそして頻繁に切り替えられ、私を闇に陥れる存在なのです。

あーあ、私も「台語(閩南語)」がわかったらなー。

台湾におかっぱ頭の男の芸人で猪哥亮Chu Ko-Liangチューコーリアン(1946年生まれ)という人がいた。三国志に出てくる諸葛孔明、諸葛亮(しょかつりょう:zhūgěliàng)と北京語でほぼ同じ発音になるのですぐに覚えた。中国語の《猪》は豚の意味なので、「豚兄貴の亮」といった感覚だろうか。

この人が司会する番組はすべて「台語」しか話さない。猪哥亮が話すとみんなが大笑いする。絶大な人気を誇るお笑い芸人らしい。でも、私にはまったくわからない。字幕を見るしかない。でも、字幕を読んでいるだけだとなぜかちっともおもしろくない。

藍正龍Lan Cheng-lungランジェンロンが《鶏排英雄》(2011)で共演していたのが、きっかけでいくつか番組を見た。

「台語」がわからなくて何が悔しいって猪哥亮のトークが聞き取れないのが、悔しかった。

久しぶりにこの人の番組を見てみようと検索してみたら、なんと2017年5月15日に70歳で亡くなっていた。ご冥福をお祈りする。

台湾のトーク番組《康煕来了》に猪哥亮が出ていた。この番組の司会者たち、徐熙娣(小S)も蔡康永も外省人で「国語(北京語)」しか話さない。猪哥亮もここではなんと「国語」を話していた。それでも、話が盛り上がってくると「台語」になる。それでも、誰一人戸惑うことなく、話は続いていく。みんな聞き取れるのだ。うーん。

台湾は大好きだが、この「台語」がある限り、私は台湾の何か芯にあるものがわからないままなのではないかと思えるのだ。

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