「GDPがゴキブリに?」:息子と笑う同音異義語

10年近く前の正月に親族で集まっていたおり、石川五右衛門だかネズミ小僧だかの話をしていて、子どもに「古文は難しい」と言う話になった。「あー、それは古文やから、子どもには難しいなあ」と大人たちが口々に言っていると、当時5,6歳だった息子が「そしたら、親分やったら簡単なん?」と言い出した。

大人たちはしばし沈黙。幼な子の発言の意味が呑み込めず、目をぱちくり。そして、妹(40代)が笑い出した。「そうやな。子分には難しいけど、親分にはわかるかもな」

息子は古文(こぶん)を子分(こぶん)と理解していたのである。石川五右衛門やネズミ小僧は子分でさらに上に親分がいるという発想だったようだ。子どもはときどき大人たちが思いもよらぬ、解釈をしていておもしろい。私はなかなか「子分」という漢字が思いつかず、同音異義語だという意識がなかった。

さて、2020年2月18日(火)の朝、ラジオでNHKニュースを聞いていると「 GDPがゴキブリにマイナス成長になった」 という報道が流れてきた。中2になった息子は 「えっ? 今、なんて言うた?」とラジオに突っ込み、なんだかうれしそうにニヤニヤしている。私も「は? ゴキブリ?」と思ったので、今回はニヤニヤの意味がすぐわかった。

これは、2019年10~12月期のGDP(国内総生産)が「5期ぶりに」マイナス成長だったというニュース。これは1年を四分割した四半期を単位として発表されているようで、朝日新聞によると「マイナス成長は5四半期ぶり」だったとのことである。 ここ一年あまりプラス成長だったのが、消費増税に台風被害などが重なり、落ち込んだというものである。

ラジオのニュースでは、「ごしはんきぶり」と言ったのでは意味がわかりづらいという配慮からか「GDPが5期ぶりにマイナス成長になった」と伝えたのだろう。でも、読んでいたアナウンサーはこれは「ゴキブリに」と聞き間違えられそうだと気づいたらしく、少しゆっくり強調して読んでいたように感じた。

息子に朝刊を見せて「5期ぶり」だと説明すると「あ、そういうことね」と納得したが、やはりこの同音異義語は笑いを誘う。その日は1日このことを思い出しては二人でニヤニヤした。インフルエンザで学年閉鎖の続く、ある朝の出来事であった。

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