balmy は「さわやか」か

『究極英単語』というアプリで「TOEFL600点突破英単語」を毎日50個ずつ練習している。半年は続けたのではないかと思う。なぜ50個かというと、

毎日無料でできるのが50個までで、それ以上は有料オプションだからだ。実際は英検1級の単語をやりたいが、それも有料オプションになるので、TOEFL600点突破英単語をしている。英検とTOEFLでは出題傾向が明らかに異なるので、あまり役に立っていない可能性もあるが、未習語彙がある以上、覚えておいて損はない。

このアプリ、なかなかよくできていて、最初は英語から日本語訳の4択形式だが、その次は日本語訳から英単語の4択、次のステップが英単語から日本語訳を思い出す類、最後は日本語訳から英単語を思い出すという風にレベルアップしていく。

4択のうちはまあまあできる。だが、自力で思い出して音を再生する、スペルを思い浮かべるというのはなかなか難しい。だが、一般的に単語カードで語彙を覚える際はそういうことをしているわけだ。

そして、何度やっても覚えられないものが残っていく。その一つが「balmy」という語だ。なぜこのことばが「さわやか」という意味なのか全く結び付けられない。「さわやか」「爽快」「フレッシュ」…「さわやか」には無声摩擦音が必要だろう。

それなのに、balmyには有声子音しかないうえ、摩擦音がないのである。なんと暑苦しい音の羅列だろう。

この語を見ると、2017年公開の英米映画『ヴィクトリア女王 最期の秘密 Victoria & Abdul』でアブドゥル役をしていたインド人俳優 Ali Fazal の顔が浮かんでくる。ハンサムだとは思うが、私にとっては暑苦しくて濃い顔だ。だが、どこかで彼のことをbalmyと書いているものを読んだように記憶している。

そして、balmyを『研究社 新英和中辞典』で調べてみた。

balmy【形容詞】
1a香油の(ような); 香りのよい.
bさわやかな,穏和な.
 例:balmy weather すがすがしい天候.
2《米口語》 気のふれた,まぬけな (《英俗》 barmy).
 例:go balmy 気がふれる.

「さわやかな」は第1義ではなく、第2義だった。「かぐわしい」というのが最初の意味だった。形容詞になる前の「balm」は香油という意味で、かつて香港土産として有名だった「タイガーバーム」の「balm」だということが判明。

ハッカの匂いのする塗り薬で万能薬だと言われて90年代には何個も買って帰って配ったものだ。試験前に徹夜するとき、眠気覚ましに瞼に塗るというような話もあった。

それにしても、その後に続く俗語的な「気のふれた、まぬけな」の意味にも愕然とする。バレエ『ラ・バヤデール』で戦死ソロルがアヘンを吸っているイメージが突如として浮かぶ。

ここまで調べれば、もう二度と balmy を忘れることはないだろう。やはり周辺の語が目に入る紙の辞書の強みか。

「balmy:さわやかな」としか示してこない『究極英単語』…。こまごまと語釈や例文の書かれた語もあるのだが、balmyに関しては薄っぺら過ぎたと思ってしまった。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です