留学生から学んだ二つの名言

教師をしていていつも思うのは、私が教えていることよりも私が教えてもらうことの方がよほど多いということである。それは学習者の産出する日本語から日本語の発音や文法の特徴を学ぶといった側面もあるが、新しい情報が得られるという側面も大きい。

例えば、学部留学生対象のスピーチの授業でここ3年ほど『座右の銘』を紹介してもらっている。

Dane is better than perfect.
完璧を目指すよりまず終わらせろ。

Facebookのオフィスの壁に貼ってあるというCEO Zuckerberg のことば。

専門の授業のものも含め、大量の課題を丁寧にこなしていた中国からの女子留学生が紹介してくれた。彼女の場合は完璧を目指さないと言いながら、いつも完成度の高いものを提出していたのが印象的だった。

当時、私自身が自分の課題をうまくこなせておらず、締切前のやっつけ仕事が増えていたので、この言葉にひどく共感させられた。とりあえずとりかかり一度仕上げる。これが実はいいものを作り出す重要な第一歩なのだ。

时间像海绵里的水,只要愿挤,总会有的。
Time is like the water in sponge, if you squeeze, you can always get some.
時間はスポンジに含まれた水のようなもので、絞る気になればなんだかんだ言ってもまだあるものだ。

魯迅のことばだそうだ。だが、中国人留学生が自分でこのことばを訳してスピーチしたので、その場では内容がよく理解できなかった。あとになって原文を書いてもらい、検索してみるとなかなか奥が深い名言だと思うようになった。

時間がない、忙しいと言い訳して何もしないのは、それをしたいという強い気持ちが足りないからに過ぎないと言われているわけだ。本当になりたい自分になるためには時間を言い訳にしてはいけないとつくづく思う。

「先生」は先に生まれたと書く。先に生まれただけで、教室という場所では偉そうにしているが、実は先生も学生から多くを学んでいるのである。上の二つは見る人が見れば、すでに使い古された名言かもしれない。だが、そのときの私には感じるものがあった。そういう出会いや学びを繰り返せる幸せを感じながら、日々授業に向かいたい。

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