台湾映画『悲しみより、もっと悲しい物語』大阪Asian映画祭

2018年台湾で興行収入第1位を獲得したという《比悲傷更悲傷的故事》をABCホールで見てきた。タイトルからして泣かせにかかっている。(以下、ネタバレあり)

ポスターは目にしていたが、結局見には行かなかった。今になってなぜ見に行ったかというと、大阪Asian映画祭の台湾ナイトのセレモニーが上映前に行われるからだ。

邱澤ロイ・チウは来るだろうと思っていたが、ほかにも誰か知っている人が来るかと期待していたが、あとは短編映画の監督と女優で、知らない人ばかりだった。だが、話はおもしろかったので、見てみたいなと思う作品もあった。邱澤の出番ではシャッターやカメラを構える人が多数。

さて、タイトルの映画『悲しみよりもっと悲しい物語』だ。

主演の張哲凱(劉以豪 1987年生まれ)と宋媛媛(陳意涵 1983年生まれ)。2009年《痞子英雄》(Black & White)が懐かしい陳意涵ももう36歳。そんな年にはとても見えず、相変わらずかわいくて元気な印象。劉以豪は2011年《我可能不會愛你》(イタズラな恋愛白書)の「美男」の頃から考えるとよい役者に育っている。だが、またしてもレゲエヘアで、長い髪がうっとおしい。

二人の高校時代は石知田と姚愛寗が演じている。二人とも1990年生まれ。成人の役者たちとそれほど年齢が変わらない。石知田は台湾大学にいた秀才らしい。卒業したかは不明だが。

高校生を別の人が演じる必要があるのか、疑問を感じた。映画の途中で「え? 誰?」となる。別に30代が演じてもよかったとは思う。石知田の華奢な感じが少年ぽく、劉以豪のごつくたくましい感じが高校生にそぐわない…というのはわかるとしてもだ。

この映画は2009年の韓国映画『悲しみよりもっと悲しい物語』のリメイク。冒頭を少し見たが、かなり忠実にリメイクされていると感じた。ただ、役者の印象で物語の印象も大きく変わると感じた。韓国版は主役二人の顔付きがすでに薄幸。台湾版の主役はとても元気な感じ。

しかし、ラストで宋媛媛の自殺がほのめかされるのが、なんとも気に入らない。いっしょに死ぬことが美しいとはとても思えない。ロミオとジュリエットの時代ではあるまいし、現代のような何の縛りもない時代になぜ…?

あとは母親が病気の遺伝を苦にして、16歳の張哲凱にお金を渡して去るという部分。どういう心境でそうしようと思ったのか、全く理解できない。病気で死にゆく息子の世話をしたくない母親なんて果たしているだろうか…。子育てはほどほど…と思っている私ですら、これはないと思う。

この物語の根底に流れている思想がひどく軟弱でメンチメンタルなのが嫌だ。最近、『アウトランダー』でたくさん人が死んでいく場面を見過ぎているからかもしれない。生きたくても生きられない無念な人がいる一方で、人間はもともととても弱いもので「寂しさやつらさに耐えられない」という考えがとても残念に感じた。

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