《痞子英雄 Black & White》最終回  お気に入りのおじさん役者たち

人間の記憶とはなんと曖昧なものか。我ながら驚く。こんな話だったっけ? 以下、ネタバレあり。

小馬(修杰楷)は薩克奇の憐憫を感じる脳の部分を破壊する手術に失敗したということは理解していたが、三聯會に雇われていたという部分は記憶から抜け落ちていた。

雷慕莎(隋棠)が自殺したと思っていなくて、誰かに撃たれたと思っていた。早く逃げないと追手が来るのではと心配した記憶がある。

曖昧な理解だと、記憶はいとも簡単に消えてしまうということがよくわかった。字幕に書かれた中国語を辞書で調べて「そういうことか」と理解しても記憶の深部に達していないようだ。

このドラマに出演する数々のおじさん俳優たちの中から2人を取り上げたい。

現総統の役をする金士傑という役者は素晴らしい役者だと思うが、このドラマに限っては線が細すぎて総統に見えない。官僚っぽい巻舌音の交じった中国語と清廉潔白な感じはいいと思うが、もう少し貫禄が欲しいところだ。《我可能不會愛你 邦題:イタズラな恋愛白書》の白叔に見えてしまう。ちょっと総統という要職に就いているというには、年をとり過ぎているように見えてしまうのだ。1951年生まれ。当時57歳くらいのはずだが…。映画版《花甲大人轉少年》2017年の阿瑋(嚴正嵐)のパパはさすがと思ったものだが。

そして、どうしても取り上げたいのが、三聯會會長の腹心、杜文雁を演じていた那維勳。この人も金士傑と同様、舞台でならした人らしい。ただ、私がドラマで見かけたのはかなり滑稽な役が多い。例えば、《命中注定我愛你 邦題:ハートに命中!100%》のAnson役だ。ちょっとオネエっぽい話し方と言い、裏でブツブツ社長の文句を言うなど、眉毛の濃いオジサン度満開の顔と中身のギャップを楽しむ役だ。

ところが、この《痞子英雄 Black & White》では終始シリアスな強面ヤクザを演じている。顔にぴったりなのはもちろんこのヤクザの幹部役なのだが、Ansonを見ているからか、なんだか落ち着かない。低い声もすばらしい。そう言えば、長澤まさみが藍正龍と出演した2014年《流氓蛋糕店》でテット・ワダの吹き替えをしていた。ウィキペディアには「満族」という記述もある。世が世なら皇帝だった? ということか。

《痞子英雄 Black & White》はこの二人のみならず多くのベテラン役者たちによって支えられている。蔡岳勳監督は非常に丁寧にドラマを編み上げているので、何度見直しても楽しめる。ミステリー系の好きな方にはぜひおすすめしたい。

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