「高雄(たかお)」と《打狗 dǎgǒu》「民雄(たみお)」と《打猫 dǎmāo》

台湾の高雄はカオションと読まれることはあっても、「こうゆう」と音読みで読まれることがない。なぜ「たかお」と訓読みするのか。中国語由来のはずなのに訓読みするなんて、そんなことばは「はるまき(春巻)」と「たかお(高雄)」くらいだ!

…と不思議に思い、調べてみた。

すると「高雄(たかお)」という地名はもともと《打狗》(台湾語: Táⁿ-káu ターカウ)と書いたものを日本語の近い音に当てたというのである。「ターカウ」は台湾原住民マカタオ(馬卡道族)のことばで「竹林」の意味を表し、そこにはもともとタアカウ社という集落があったという。《打狗》は中国語で「犬をたたく」という意味で、日本統治時代に台湾総督府が地名にふさわしくないと判断し「たかお」の音に「高雄」の漢字をあてることにした。

さらに驚いたことに、この《打狗》には対になる《打猫》(台湾語:Tá-niau ターニャウ)という地名が台湾嘉義県にあった。もともとホアニア族ロツァ支族の集落タアニャウ社があったところで、《打狗》が「高雄」なら《打猫》は「民雄(たみお)」としたのだという。

なんとまあ、すごい地名の変遷だろう。よくもこんなうまい対を考え付いたものだ。だが、これも日本統治時代にゆがめられた台湾文化の一つと言えるかもしれない。

今回泊まった高雄中央公園英迪格酒店Hotel Indigo Kaohsiung Central Parkの部屋の壁には、《臺灣高雄》や《謝謝光臨(ご来店ありがとうございます)》の文字とともに、でかでかと「打狗」の文字があった(写真)。

本来の「打狗」に戻すべきだという運動があるのかもしれない。現地の人たちはこの地名についてどう感じているのだろう。当時の台湾総督府としてはよかれと思っての変更だったのだろうが、実は僭越至極とも考えられる。

映画『海角七號』に出ていた俳優に「民雄」というパイワン族の人がいるが、彼の名はこのもと《打猫》の「民雄郷」とは関係ないのかとまた新たな好奇心がもたげる今日この頃…。

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