ロイヤルバレエinシネマで『うたかたの恋』を見た。絡みつくような、そして尚且つ、アクロバティックなパ・ドゥ・ドゥに圧倒された。ケネス・マクミラン振付のバレエは『マノン』『ロミオとジュリエット』とどれも暗いが、これは極めつけに暗い。
ウィキペディアの『うたかたの恋(バレエ)』のページによると、
1889年1月に発生したオーストリア=ハンガリー帝国の皇太子ルドルフと男爵令嬢マリー・ヴェッツェラの心中事件(マイヤーリング事件)を題材にとり、19世紀末の宮廷社会の中で抑圧されたルドルフの不幸な境遇とその人物像、及び死に至るまでの退廃的な生活を描き出している。
死、性、暴力、絶望などがテーマとして扱われるため、子ども向けではないと判断し、小5の娘は連れて行かなかった。
しかし、日曜昼間10:40~14:00の上映だったためか、少なくとも子どもを2人見かけた。1人は見た感じ小学校3、4年でバレエを習っている子。でも、この子もきっとこの作品は見続けるのがつらかったと思う。もう一人はどう見ても3、4歳。こんな小さい子がいい天気の日曜日に3時間以上も真っ暗な映画館にいるなんて…気の毒。とってもおりこうだったのだけど、やはり気になってしまった。
サラ・ラム Sarah Lamb が17歳の男爵令嬢マリー・ヴェッツェラを演じていて、可憐な容姿がぴったりだった。実はいったい何歳なのだろうと調べてみてびっくり、38歳だった。ヌニェス(36)より年上とは知らなかった。全く問題なく17歳に見えるからたいしたものだ。
男性一人主役で踊りっぱなしのスティーブン・マクレー Steven McRae が33歳。マクレーの方が5つも若いなんて…。実際のマイヤーリング事件でオーストリア=ハンガリー帝国皇太子ルドルフは30歳でなくなっているので、それほど齟齬はない。退廃的な大役を見事に演じていた。
バレエを見始めたばかりのころは《眠りの森の美女》《くるみ割り人形》などお伽噺ばかりを題材にしているように思っていたが、それは日本のバレエ教室の発表会で子どもたちが出演するにはそういう演目が適しているというだけのことで、バレエは実は大人の芸術でもある。
超絶技巧の絡みつくパ・ドゥ・ドゥは物語の場面として必要なものを表現している。それは心理的な渇望だったり性的な興奮だったりする。まだ私はバレエの世界に足を踏み入れたばかり。秘められた奥深さに驚嘆しつつ、大人のバレエをこれからも堪能していきたいと思った。