好きで楽しんでやっている人にはかなわない

2018年12月1日兵庫県立芸術文化センターでのマリインスキーバレエの『ドン・キホーテ』で見た永久メイの可憐なキューピッドが忘れられない。正確でありながら、実に伸びやかに楽しそうに踊っていた。

私が初めて見た『ドン・キホーテ』全幕は2010年オランダ国立バレエのBlu-rayで、アンナ・ツィガンコワ Anna Tsygankova がキトリ、マシュー・ゴールディング Matthew Golding がバジルをしていたもの。このときのキューピッドが強烈だった。

Maia Makhateli というジョージア(グルジア)出身のダンサーが踊っていたのだが、かなり胸の大きな人で、キューピッドがあまりにも女性的な体つきで驚いたのだった。

そのころ、娘は9歳だったので、コンクールで娘と同じ年頃の子どもが踊るキューピッドを見慣れていたせいでもある。キューピッドはほっそりした体系の中性的な人が踊るべきだと思っていた。

永久メイのキューピッドは可憐ということばがピッタリ。マリインスキー・バレエの舞踊監督、ユーリー・ファテーエフが疲れを知らぬかのように一日中楽しそうに踊り続ける彼女に一目ぼれしたというのもうなずける。

彼女を見ていて思い出すのは、2000年シドニー五輪で金メダルをとったマラソン選手のQちゃんこと、高橋尚子だ。42㎞も走るフルマラソンはさぞかし辛いレースだろうと思われるのに、楽しくてたまらないというように笑顔で跳ねるように軽々と走っていた。

「つらいつらいと思いながら、ここは我慢だ」と思いながらすることが「楽しくてたまらない」ことに勝てるはずがないと思うのだ。何をするにしても楽しくなければ上達しない。人生一度きりなのだから、なんでも楽しまないと。

最もこのことばを痛感するのは育児である。育児こそ、楽しいと思ってするのとつらいと思ってするのとでは全然ちがう。頭のてっぺんからつま先まで子どもが泥んこになったり、部屋をめちゃくちゃに散らかしたりしたときこそ、写真やビデオでも撮って、楽しい記録として残すことだ。そうすることで、もっと派手にやっていいよ、という余裕が生まれたものだ。

自分を追い込むとどんどん辛くなる。なんでも楽しむ余裕を持ちたいものだ。永遠に続く大惨事などない。

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