中国語の《告诉》は日本の漢字だと「告訴」となり、まるで裁判を起こすかのような構えになるが、中国語ではただ「告げる、言う」というだけの意味である。初級レベルで頻繁に出てくるので、これは漢字を見ても日本語の意味が浮かぶことはないが、難しいのはむしろgàosùという発音かと思う。
中国語の発音をカタカナで示すとすると「ガオス」となるのだろうが、日本語母語話者が「ガオス」を読むときの発音とはかなり異なっている。日本語母語話者は語尾のスの母音を「四sì」のように口を横に開いて発音してしまう、はなはだしきに至っては無声化させてしまう(もちろん私自身の癖である)。しかし、このsùはùの母音を唇を小さくすぼめてしっかり発音した上で、第四声の声調をきちんと載せなくてはならない。
大学の第二外国語で中国語を習ったときに、先生がそういう注意をされていたのをおぼろげに覚えている。しかし、本当にそのことが体に浸み込んだのは、台湾ドラマの中で役者の発音する《告诉》もそこまで口とがらす?と思うくらい小さいùを頻繁に聞くようになってからである。
日本語の発話に関して、東京に比べて関西は母音のウが唇の開きが小さく奥舌で、無声化しにくいと言われているが、関西人の私でも《告诉》gàosùのùの発音は難しい。いっそ日本語の発音にはない発音だと思ったほうがよいと思う。
そういえば、フランスでPAUという町に1年住んでいたが、この町の名前も「ポー」と発音すると全く通じず、TGVの切符が変えず苦労した。小さく口をすぼめて奥舌にする。日本語の母音はウもオも何とも適当な発音に思えてきた。