「奮発」と「キヨブタ」

初めての結婚記念日に「奮発して」高級レストランを予約していたのに、突然残業しなくてはならない事態が勃発する。さて、あなたは残業する?

というような問題が『上級レベル ロールプレイで学ぶビジネス日本語』に載っていた。

「奮発する」という漢字だけ見ていると、金銭との関わりが感じられない。中国語母語の学習者たちはどう理解するのだろうと思っていたら、やはり「①気力を奮い起こすこと、発奮」(『デジタル大辞泉』)という意味で捉えていた。

日本語の「奮発」がなぜ「②思い切りよく金品を出すこと」(『デジタル大辞泉』)という意味を得たのか不思議だ。「発奮」という漢字の順序を入れ替えたことばがあり、そちらは「気力を奮い起こすこと」という意味なのだから、棲み分けが起こったのかもしれない。

それにしても、「奮発する」には何やら母(1945年生まれ)の世代のにおいがする。最近聞かないことばだと思ったので、「キヨブタ」を紹介した。ご存じ「清水の舞台から飛び降りる」である。これは「思い切って大きな決断を下す」(『デジタル大辞泉』)という意味で「金品の出すこと」には限らないが、高額な買い物をしたときにも用いられる。

授業終了後に「キヨブタ」をググろうとして「キヨプタ」と押していたらしい。韓国語の「キヨプタ 귀엽다(かわいい)」がどっさりかかった。韓国語は少しかじったはずだが、まったくノーマークの語で、どこかで役に立つかもしれないから覚えておこうと思った。

「キヨブタ」を正しく入力して検索すると、「現在は死語の部類に入るらしい」とか「少し前の若者言葉」というような記述があり、ショックを受けた。「奮発する」に比べたら、まだまだ最近のことばのように思っていたが、すでに私の頭は古いらしい。

だが、留学生たちは京都の清水寺にはけっこう行っており、「えー? 自殺ですか」などと言う人も出てきて話が盛り上がったので、良しとしよう。

舞台は地上から約12メートルあり、4階建てのビルから飛び降りるのと同じだそうだ。江戸時代には234人飛び降りて、34人亡くなったという記録もあるらしい。(Nikkei Style「『清水の舞台から…』 無茶な飛び降り、実は願掛け」)

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