Sherlock 2-2 バスカヴィルの犬における ‘cell’ の使用について

携帯電話が 日常生活に不可欠なデバイスとなって久しい 。アメリカで cell phone、英国で mobile phone と言うと聞いていたが、日本語で「携帯」と省略されるように ‘cell’ や ‘phone’ などと呼ばれるようになってきているという。シャーロックのシーズン2の2「バスカヴィルの犬」の中で、フランクランド教授がシャーロックの携帯番号を尋ねるのに cell number と言ったために「アメリカ人ですね」と言われる場面がある。この人物は1970年代にアメリカにいたが、このイギリスの架空の地名であるバスカヴィルには少なくとも20年以上住んでいるようだ。

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英国ドラマ『高慢と偏見』(1995)コリン・ファース主演

ずっと以前から見たいと思っていたコリン・ファースの出世作『高慢と偏見』がHuluにあり、全6話を視聴した。DVDを買おうかと思ったこともあったが、価格の高さに躊躇していた。

映画『ブリジット・ジョーンズの日記』(2001)を見てから、コリン・ファースが気に入っている。『ブリジット・ジョーンズの日記』の原作者がドラマ『高慢と偏見』の大ファンで、彼女のたっての願いでコリン・ファースがマーク・ダーシー役に起用されたのは有名な話である。いつかオリジナルのミスター・ダーシーを是非観なくてはと思っていた。

さて、『高慢と偏見』の感想である。

まず、女性たちの服装に面食らった。18世紀が舞台の『アウトランダー』でコルセットをつけている女性たちを見慣れていたので、1800年前後のイギリスの女性たちがコルセットをつけていないのに驚いたわけだ。ジェーン・オースティンの小説『高慢と偏見』は1813年刊行だが、1796-97年にかけてそのもととなった「第一印象」という作品が書かれている。

ドラマに登場するのは胸の下に切り替えがあり、あとはふくらみのないストンとしたスカートがあるだけのワンピースである。サマードレスのようだと言えばまだ聞こえがよいが、まるでネグリジェ(寝間着)のように見えてしまう。

1800年前後にフランスでコルセットを外したファッションが流行したのを取り入れているのだろう。時代考証がきちんとなされたうえでの衣装選択だと思われる。現にナポレオンの妻ジョゼフィーヌ・ド・ボアルネの肖像ではコルセットをつけていない。

最初は田舎の女性たちがうちでリラックスしているときだけかと思ったが、そういうわけでもなさそうだ。改まったディナーの場面や舞踏会でも同じようなドレスだった。都会育ちのお金持ちの女性たちは若干おしゃれにはなるが、それでもコルセットはしていない。

コリン・ファースは若い。当時36歳。最初の方は仏頂面ばかりだったが、リジーへの気持ちを自覚し始めてからは徐々に表情が柔らかくなっていく。特にリジーがピアノを弾きながら歌っているシーンではニヤニヤに近い、何とも楽しそうな笑みを浮かべており、こちらまでうれしくなってくる。最後の結婚式のあとリジーと馬車に乗るシーンでは相好をくずして大笑いしていて、こんな顔は初めて見たと思った。

ミスター・ダーシーが湖に飛び込むシーンが話題になったようだ。恋に悩む男性が水に飛び込むのはよくありがちな展開だが、現代の感覚からすると、そんなにいっぱい服着たまま飛び込まなくても…と思った。

リジー役のジェニファー・イーリー Jennifer Ehle は美人だとは思うが、かなりぽっちゃりしていて、若奥様のような貫禄がある。途中から渡辺えり子に見えてきて困ったが、笑顔が素敵で印象が良い。

しかし、時代劇とは言え、1995年のドラマにはやはりあちこちに古さを感じさせる部分がある。ドラマに合わされる音楽がどうもイケてない。田舎っぽさを出す必要がある部分もあるとは思うが、故意にやっているとは思えない陳腐さを感じる。21世紀のドラマを見慣れてしまうと時代を感じてしまう。

ただ、乗馬シーンや馬車が出て来るあたりや、古めかしい立派なお屋敷が多数出て来るのには感心した。お屋敷の中には痛みが激しいものがあり、少々残念ではあったが、物語の中の当時はそういうものだったのかもしれない。

このドラマの魅力は原作に忠実な生き生きとした人物描写だ。多少の誇張はあるにせよ、反面教師とすべき部分が多くあった。口うるさい母親やKYな牧師のようにはなるまいと我が身を戒めつつ、視聴を終えた。

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村上春樹『騎士団長殺し』騎士団長のことばづかいの効果

すでに刊行から2年以上経っているが、やっと村上春樹『騎士団長殺し』を読んだ。身長60㎝くらいの自称「イデア」だという独特のキャラクター「騎士団長」のことばづかいがおもしろい。雨田具彦という画家が描いた強烈なメッセージを含んだ日本画に登場する飛鳥時代の衣装に身を包んだ人物だという。誰かが絵にしてくれないかなと思うが、私自身まだ頭にこのキャラクターの像をうまく描けずにいる。 “村上春樹『騎士団長殺し』騎士団長のことばづかいの効果” の続きを読む