『アウトランダー』シーズン3まで:女性と医者

なんと壮大で念入りに作られたストーリーだろう。Netflixではシーズン3までしか見られないのを恨む。

毎日3話ずつ見ていたら、頭の中がすっかりアウトランダーワールドになってしまっていて、現実世界にいる自分がなんてつまらない日々を送っているのだろうと思えて来る。

シーズン3の最初はとてもつらい。ジェイミーもクレアも大きな喪失感を抱えて生きていく。18世紀と20世紀を行ったり来たりしながら話が進んでいく。

このドラマを見て痛感するのは、この200年での社会の変化である。特に医学の進歩と女性の権利保障について深く考えさせられる。

クレアが医者を目指そうとしたこと、非常に説得力があると感じた。血まみれになりながら、戦場で傷ついた兵士たちの治療をしてきた経験は外科医という道に無理なく結びつく。

しかし、女性であることで医学校での風当たりは強かった。それでも、クレアが差別に屈せず、ひたむきに自身の道を歩む姿は心を打つ。娘にもこんな話を読ませたら(このドラマは子どもにはとても見せられない…)、少しは具体的に自分の将来を描くようになるだろうかと想像した。

子どもに医者になってほしいと思ったことなど今まで一度もないが、クレアが18世紀で果たした役割を考えると、本当に人の役に立つというのはこういうことだろうと思うのだった。尊敬せずにはいられない。

現代の医療技術は1960年代のものとは比べ物にならないくらい進んでいる。クレアが学んだような技術や知識はさらに進歩し、細分化専門化されているのだろう。開腹手術は腹腔鏡手術に、ペースメーカーや人工肛門など、素人の私にでもさまざまな例が思い浮かぶ。

今の時代の医者は、数値や画像ばかりを見ていて、患者と直接触れ合うことが希薄になっている傾向があると聞く。ドラえもんのポケットさながら、クレアが18世紀に携えて行った医療器具を思うと、今の医者は高性能な医療機器がないと何も診断できなくなっていはしないかと思ったりもした。

1945-1968年、原作の著者ダイアナ・ガバルトンはなんと絶妙な時代を選んだのだろうとまたしても感心してしまった。クレアが21世紀から18世紀へ行ったとするとサバイバルできない可能性が高い。

暴力でものごとが解決されることが日常茶飯事の時代。迷信が強く信じられている時代。男女の権利に大きな違いがあった時代。『女王陛下のお気に入り』同様、昔のリアルな生活への想像力がかき立てられるところが楽しくてやめられない。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です