ヌニェスとムンタギロフの『ドン・キホーテ』@ロイヤルバレエ

2019年2月15日19:30から『ドン・キホーテ』を見てきた。ヌニェス、ムンタギロフ、平野、モレラ主演。

カルロス・アコスタCarlos Acostaがアレンジした『ドン・キホーテ』を見るのは初めて。大幅にアレンジされているのかと思いきや、ほぼ私のよく知るドンキだった。キューピッドがアムール(仏語で「愛」の意味)という名でチュチュを着ているとか、キトリの友人は一人ずつのバリエーションではなく、二人で一度に踊ってしまうとか。2018年12月27日に映画館で見たボリショイ版にはかなり戸惑ったが、こちらは王道という感じだった。

今回の席は15列目中央で、2日前の3列目に比べると舞台全体が見渡せてずいぶん見やすかった。だが、私の目では表情までは捉えられない。表情や息遣いまで見たいのか、舞台として眺めるか決めて望まないといけないわけだ。

遠目で見るヌニェスのキトリは、お茶目でかわいい。今までには妖艶なキトリもけっこう見たけど、このキトリはお転婆少女。

パパ、ロレンツォが無理やり貴族の男性の前に抱きかかえて連れていくとき、キトリの足はフレックスでお人形かマンガのようで、笑いを誘う。ドン・キホーテのおじさんや貴族のお金持ちとは全然楽しそうではないのに、バジルといっしょならすごくうれしそう。はしばしからバジルへの愛が伝わってくるキトリだった。

ムンタギロフのバジルは、なんて品があるのだろう。こんなバジルも珍しい。他の女性と話したりしてキトリを心配させる部分はあるのだが「おれは男だ」的な感じがしない。根っからの王子様だ。

3幕結婚式は二人とも白の衣装。ムンタギロフにはぴったりだ。ただ、白は体がとても大きく見えて、長い足を開いて跳んでまわると狭い舞台の上で人にあたらないかこちらが心配になるほどだった。

Asphodel Meadows のときはとても広く見えた舞台だが、ドンキはセットも大きい上、舞台上の人数が多いので、ほんとに狭く感じた。日本のホールが狭いだけではないのだ。

平野亮一はエスパーダ。グリーンの衣装に身を包み、素晴らしい跳躍を見せる写真がプログラムに載っていたが、期待を裏切らない踊りと存在感だった。

さて、特筆すべきは舞台終了後の観客の熱狂ぶりである。2日前に見た『二羽の鳩』もよかったのだが、今回のような熱狂はなかった。出し物のちがいであることも大きい。『ドン・キホーテ』は明るく楽しいバレエだし、盛り上がる見せ場も多い。
それにしても、カーテンコールまでの時間が長く、思わず「じらしてる?」と思うほどだった。

再び幕が開くと拍手とともに観客が声を上げる、総立ちになる。ヌニェスとムンタギロフが現れるタイミングも少し遅れ気味で、やっぱり「じらしている」のだ。

幕が閉じても拍手が鳴りやまない。幕の間から挨拶に出て来る人によって反応がちがう。バレエダンサーへの評価はこういう観客の反応にすべて現れる。

私はロイヤルオペラハウスにばかり通っているが、ミュージカルや演劇も含めるとロンドンの街にはそれこそ星の数ほど劇場がある。あちこちの劇場で毎晩こういう場面が繰り返されているのかと思うと、すごい街だなと改めて思った。

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