「砂漠を森林に還元する」? 上級語彙はコロケーション(語の連結)に注意!

会話の授業で環境問題をテーマにした課を扱った。今日はその課で出てきた漢語の読み方と短文作りをクイズで出した。
その中に「還元」という語があった。教科書『日本語超級話者へのかけはし―きちんと伝える技術と表現』(p.117)に出ていた例文は次のようなものだ。

ごみをなるべく出さないようにするために、自然への還元が難しいとされるプラスチック製品の使用を禁止するというのはどうでしょうか。

短文作りで、理系の学生の中には、化学の問題として「酸化」の反対の変化を示す例文を書く人もいた。
経済学的な用法で、「円高差益還元」や「利益を社会に還元する」といった例でもよい。

デジタル大辞泉』には次のように出ている。

かん‐げん〔クワン‐〕【還元】[名](スル)
1 物事をもとの形・性質・状態などに戻すこと。「利益の一部を社会に還元する」「濃縮果汁を還元する」
2 酸素の化合物から酸素を奪うこと。または、ある物質が水素と化合すること。一般的には、原子または原子団に電子を与えること。→酸化

「元の状態に戻すこと」だとだけ理解すると、中には奇妙な文が現れる。例えば次のようなものである。

「砂漠を森林に還元する」

「還元」ということばはコロケーションcollocation、語の連結、中国語でいうところの《搭配》が難しい。非常に限定的にしか使用できない。これを知ってもらいたいと思い、クイズに出したのである。

ちなみに、中国語で「還元」を何というのか調べてみると「还原」らしい。

百度百科
还原 huán yuán
指事物恢复到原来的状况或形状,在化学中指用化学或电化学方法引起的以下的作用或过程,即除去非金属元素以产生金属。从某物质除去氧;与氢化合或受氢作用。用降低电负性部分的比例改变某种化合物;改变某种元素或离子从较高的氧化态至较低的氧化态,加一个或几个电子到一个原子、离子或分子。

「還元」という語の「元の状態に戻すこと」という意味を知るだけでは使えないので、どんな語と組み合わせて使われるか覚える必要があるということだ。

他の例だと「甚大」は「甚大な被害」「甚大な損害」とは言えても、「甚大な問題」とは言えない。「深刻な問題」と言うべきだろう。同様に「膨大な数」「巨額の資金」「多額の借金」などコロケーションの問題は学習者にとって大きなハードルとなる。

私も中国語で話すときコロケーションを考え出すと不安で話せなくなる。こういう問題があると紹介はするが、即座に使いこなせるようになる学習者はまずいない。使用頻度の低い語彙は母語話者でもコロケーションが怪しくなってくる。ある程度おおらかに許容していく必要があるのではないかと思う。

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