友人に柚子をもらったので、柚子茶にした。毎年柚子をもらうとたいてい柚子茶を作る。柚子の種をとりだし、皮も身も細かく切って氷砂糖といっしょに広口瓶に入れていく。種も広口瓶に入れる。種を入れるからこそ種のペクチンがとろっとしたゼラチン状の柚子茶にしてくれるのだそうだ。
今年はもらった柚子が大量だったので、1リットルの広口瓶にほぼいっぱいになった。
11月28日に作ったので、その約三週間後12月19日あたりには瓶を開けて食べようと考えつつ、美しい黄色い色を眺めていた。以前作り方を調べた本には、ときどき上下逆さにして中身をかき混ぜてくださいと書いてあったが、基本的に三週間くらいは瓶のふたをあけずに置いておくように書いてあった。
さて、その11月28日、私が仕事に行っている間に中1の息子が帰ってきた。今、食べ盛りの息子は食べ物が目に入ったら、それをすべて食べないと気が済まないとしか思えないほど、食べられるものなら何でも食べてしまう。パンやおかしが買ってあればよいが、食べるものが見当たらないと、竹輪でもハムでも片っ端から食べていて、まるでいなごの大群が押し寄せたかのように台所が不毛な砂漠になってしまう。
さて、その日息子の目にとまったのは柚子茶だった。息子が見逃すはずもなく、まだ作ったばかりで味も染みていないのに、ぱかっとふたを開けてちょっと食べてみたのだそうだ。
最初、柚子が多すぎて、氷砂糖があまり投入できず、なかなか氷砂糖の溶けたものが閩全体に行きわたらなかった。さらに、瓶底に種がたまっていて、種から出てくるねばった物質がさらに種を固めてしまい、瓶を振ってもなかなか動かなかった。
息子が一回開けてぺろっと食べたと聞いて、一度ふたを閉めたら三週間開けてはいけないとなぜか信じ込んでいた私は「な~んだ」と思った。いったい何を妄信していたのかとばかばかしくなった。
そして、ふたを開けて氷砂糖を追加したのだった。
その後、夫がまたふたを開けて箸を瓶底に突っ込んで固まっていた柚子の種を動かしたらしい。その後もときどき大きな瓶を振ってくれているらしい。
美しい黄色の柚子茶がいっぱいに詰まった大きな広口瓶を台所のカウンターの上に置いて毎日眺めながら、家族みんなで12月19日を楽しみに待っている我が家であった。
実はもういつでも飲んでもいいように思うが、この「楽しみに眺める」幸せも悪くないと思う今日この頃である。