台湾に黄子佼という司会者がいる。小S(徐熙娣)の元カレだったが、2001年にふたまたが発覚し絶交、2015年にバラエティー番組《康煕来了》(小S司会)に呼ばれて初めて和解したという人物である。この人が司会をしている番組は見たことがなかったのだが、不遇の時代が長かったにもかかわらず、《Yahoo TV 佼心食堂》ではキレキレのいい司会をしている。
しかし、この番組を見た理由は黄子佼ではない。《誰先愛上他的》主演の邱澤・謝盈萱と監督の1人である徐誉庭が出ていたからである。
台湾のテレビ番組はすべて字幕が付いているのだが、この番組は字幕がない。映画を見る前に一度ひととおり聞いたが、そのときは全く話が頭の中に入ってこなかった。映画を見終わってもう一度見直すとさまざまな興味深い情報が含まれていることがわかった。
《誰先愛上他的》として劇場公開されているのは4度も編集し直したバージョンだという。父親が死んだ後から話が始まり、少しずつ時間を遡っていくスタイルである。最初のバージョンとして組み立てられたものはどうも編年体(時間軸に沿った)バージョンだったようだ。
この編集作業なしには台北電影節の各賞受賞や金馬奨のノミネートはなかったと徐誉庭は語っている。金馬奨には8部門ノミネートされているが、一番賞がほしいのはどの賞かと黄子佼に訊かれ、徐誉庭は「剪辑jiǎnjí(編集)」と答えている。それほど編集の仕方で映画の良しあしが変わったと言っている。
始めの方のシーンは本当にばかばかしい設定が笑いを誘う喜劇だ。だが、徐々にそれまでの様子が明らかになっていく。この状況にたどり着くまでにどのような紆余曲折、葛藤、苦しみがあったのかが徐々に明らかになっていくのだ。
実はこの話は演劇としても上演されている。2017年11月から邱澤・嚴藝文主演で上演された《小三與小王》である。2018年にはタイトル変更があり、同じ劇を《致.這該死的愛》と呼ぶらしい。
映画の撮影はが2017年7〜8月に行われ、2018年11月2日公開であるので、ほぼ同時進行で製作されたということか。
だが、話としては別物らしい。ちらっと見た感じだとずいぶん違いそうだ。この演劇についてはまだあまり調べられていないので、またの機会とする。
徐誉庭によると、編集段階でかなり重要な長いシーンを泣く泣くカットしたという。しかし、大胆なカットとシーンの組み換えによってこの作品に命が吹き込まれた。この最終バージョンにたどり着くまでそれこそ相当の「紆余曲折、葛藤、苦しみ」があったということだ。
このカットされたというシーンが気になる。プロモーション映像に使われているが本編にはなかった3人の結婚式のシーンがそれではないかとひそかに想像している。