台湾郷土愛で見直される《台客》スタイルとカラフルなゴム草履

台湾の中国語でしか言わないかもしれないが、《他很台》(彼はとても台湾らしい)とか《台客》という言い方を一時よく聞いた。確か《康熙来了》でアシスタントの陳漢典がチンピラ風の姿で現れた際、司会者の蔡康永・徐熙娣の二人に言われていて、調べた記憶がある。

《台客》が何を指しているかというと、一言で言うと「昔ながらの台湾くさい男たち」のことで、具体的なイメージを語るなら、短パン、ゴム草履に花柄の派手な半袖シャツ、口には真っ赤な檳榔(噛みたばこ)を噛んでいるパンチパーマの兄ちゃん…のような感じである。日本だと「チンピラ」っぽいというしかない。

絶えず檳榔を噛んでいるのは2017年のドラマ《花甲男孩轉大人》の鄭花明(劉冠廷)、パンチパーマは2011年の映画《鷄排英雄》の阿華(藍正龍)などが浮かぶ。

そして、ダサいと思われているのにもかかわらず、本人はその格好がけっこうイケてると思っていることがポイントである。決して自分のことを《台客》だとは思っていないのである。

もともと《台客》にはポジティブなイメージはなく、台湾ファッションにこだわる人をただただ軽蔑した言い方だった。だが、2000年代に入ってこの様子が少しずつ変化してきたと言う。2010年の映画《艋舺》(邦題『モンガに散る』)あたりから、台湾独自の文化を大切にしようという流れから《台客》にもポジティブなイメージが出てきたようだ。

《誰先愛上他的》の阿傑役の邱澤に至っては、チンピラのような格好をしているのに、《台客》のダサさはない。むしろ彼独自のスタイルという感じだ。

主題歌を歌っていた李英宏も《台客》っぽいファッションでMVに登場するが、決してかっこ悪いわけではない。むしろイケメンで売っているらしい。ちょっと線は細いのだが。

そういった台湾文化見直しの潮流の影響か、台湾ではゴム草履売り場がおしゃれなファッションビルに入っている。

台北車站付近中山地下街のゴム草履売り場

写真は、台北車站付近の確か中山地下街にあった靴屋。ゴム草履がびっしりと並べられた一角がある。日本ではありえないほど豊富な品揃えでカラフルである。

最近日本では子ども用にもクロックスなど足から離れないようになっている履物しか水辺ではだめというお達しがしばしば出る。だが、ゴム草履は足の指の力が強くなって身体にもよいという。次に来る時は家族で派手なゴム草履を買ってみようかと思った。

最後に、この履物「ゴム草履」を「ビーチサンダル」と呼ぶ人もいるのだが、わたしにとっては「ビーチサンダル」という名称ははこじゃれすぎていて、この履物の名前としてはあまりふさわしくないと思うのである。《很台》な雰囲気を残すためにも「ゴム草履」がいい。

中国語で何と言えばよいのかと調べてみると、《拖鞋》だけだと中央に鼻緒のないタイプのサンダルも含まれる。《海灘拖鞋》と言うようだ。結局中国語も「ビーチサンダル」ということらしい…。今度台湾人に訊いてみよう。

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