『声』アーナルデュル・インドリダソン:登場人物の名前が覚えられない翻訳小説…

エーレンデュル警部シリーズの『湿地』と『緑衣の女』がとてもおもしろかったので、シリーズの続きにあたる『声』を読んでいる。久しぶりのアイスランド・ミステリーである。
このシリーズはアイスランドの風土や歴史、国土、人口の小ささが日本と全くちがっていておもしろい。

アイスランドについて知っていることと言えば、首都はレイキャビク。温泉がたくさんある。長い冬。もうおばさんだろうけど、90年代は歌姫と呼ばれたビョークくらい。

それが、このシリーズを読むと無性にアイスランドに行ってみたくなる。一度本気になって本屋へ行ってアイスランドのガイドブックを探したことがある。『地球の歩き方』のあのポピュラーな黄色い装丁のシリーズには「アイスランド」がなく、『北欧』の中にすらはいっていなかった。『地球の歩き方 Plat アイスランド』というのがあるらしい。ガイドの少なさすら、アイスランドの神秘性を増す仕掛けの一部のように思える。

さて、この『声』という小説に限らず、翻訳された外国の小説を読む際、問題になるのが、覚えにくい名前たちだ。著者の名からして、アーナルデュル・インドリダソン。主人公エーレンデュル警部。同僚の女性エリンボルグ。同僚の男性シグルデュル=オーリ。病理研究所助手(女性)のヴァルゲルデュル…。

このヴァルゲルデュルが主人公エーレンデュル警部とちょっといい関係になりそうなのだが、それにしても、日本語らしさの対局にある異国的な名前である。ひとつの名前にいったい何度「ル」が出て来るのか。ヴァデュ。「ル」だらけだ。しかも「ル」以外の音がすべて有声音(いわゆる濁音)。

被害者の男性グドロイグルをグロドイグル、著者の名前すらアーデュルをアーデュルと勝手に思い込んで読んでいたりする。

小説を読むときは声に出して読んでいるわけではないため、字面というか文字の塊でしか認識していないことがしばしばある。片仮名での文字数だったり、伸ばし棒の有無であったり…。

こういう人間のために、翻訳小説には必ず登場人物一覧がついている。読んでいる最中に何度このページを開いて、「誰だっけ」と確認したことか。男性か女性かも皆目不明だから、それも書いておいてほしい。

ドラマの登場人物名など、中国人の名前が原語読みでカタカナ表記されていると漢字不明で意味不明な上に声調も見えず悲しくなるのだが、それと同じ感覚がこのカタカナ表記のアイスランド人の名前には漂っている。

きっと現地の人にとっては、名前に含まれるひとつひとつの意味がわかるのだろうが、われわれには聞き慣れない音の羅列でしかない。

アイスランド人にファミリーネームとしての姓はなく、父称を用いるという。アーナルデュル・インドリダソンだと、インドリダソンというのは「インドリディ(父の名)+の息子」という意味だそうだ。これが女性だと「父の名+の娘」となるのだそうだ。となると、親子でもファーストネームの後の部分は異なるというわけだ。

電話帳もファーストネームで並んでいて、呼ばれるときも基本的にファーストネームのみで呼ばれるか、フルネームで呼ばれるが、後ろの名前(父称)だけで呼ばれることはないという。英語等で話すときにMr.やMs.をつけるのもファーストネームになるというわけだ。

米テレビドラマ『Gossip Girl』 に出て来るウォルドーフ家の家政婦ドロータは、ウォルドーフ家の一人娘ブレアを Miss Blair と呼び、「ブレアお嬢様」という感じが出ていたが、アイスランドではそういう呼び方が一般的だということだ。

遠くの国について少し知ると身近になった気がするものだ。アイスランドに行けるのはいったいいつになるかわからないが、アーナルデュル・インドリダソンのおかげで私の「行きたいところリスト」の上位にアイスランドが浮上することは確実である。

“『声』アーナルデュル・インドリダソン:登場人物の名前が覚えられない翻訳小説…” への1件の返信

  1. 私は著者を始め名前の語尾がデュルが多いのが気になった。東欧に多いビッチやソンと同じかなと思ったが、女性の名前にも付いていた。wikiで調べたが答えは無かった。誰か教えて下さい。

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