日本語教育とテクノロジー:教育効果と仕事量は比例するか

つい昨年までCD一枚聞くにもCDデッキを運ばなくてはいけないような教室が多かったのだが、今年度から私が教える教室はすべてパソコン・プロジェクター・スクリーン完備の教室になった。大学によっては毎回PCを立ち上げてスタンバイしておいてくれる。

今までホワイトボードに手書き、または口頭で行っていた作文課題の講評など、スライドにまとめると定着がよい。少なくとも意欲のある学生たちには響く。

だが、今まで作文の添削と採点まででもかなりの時間がかかっていたのに、さらに講評をpptにまとめるとさらに時間を要する。

これまで以上に授業外での準備がたいへんになってきた。学生の側からしても何の準備もせずに授業に行ってぼーっと話を聞いておけばよいような授業は減っていると思うが、教師も新しい機材やソフトを使いこなす必要が出てきている。

学生と教師間で課題のやりとりを可能にするシステムが多くの大学で構築されている。以前は宿題と言えば1週間後の提出で、添削した課題の返却はそのまた1週間後というサイクルであった。だが、今は週の途中で電子媒体で提出させ、次の授業で返却というサイクルが可能である。学生にとっては早くコメントがもらえていいのかもしれないが、締切後2日ほどで返却しなくてはならず、教師側としては余裕がなくつらい。

以前なら非常勤で10コマ以上教える語学教師など多くいたと思うが、1コマにかかる仕事量が増えるとコマ数をこなせなくなる。そもそも大学の先生は非常勤であっても、教えることよりも研究がその仕事の中心のはず。これでは研究にかける時間が捻出できなくなるのではなかろうか。

テクノロジーに振り回され、オーバーワークに苦しむのは教師ばかりではない。学生も宿題が多過ぎると疲れてしまう。消化不良になる前にもっとも効果的な方法や量を考慮する必要があろう。

一方で、何年も前から待ち望んでいるシステムがある。プレゼンテーションの授業で発表を聞いている学生からコメントを集めているのだが、それをなんとか発表した本人にその場で送ることはできないものだろうか。ただし、教師にはすべてが見える形で。直接本人にLINEするといった方法だと、教師がコメントの内容を管理できない。よいコメントを書いている人は高く評価されるべきで、成績にコメント力を反映させたいのである。

結局、毎回集めたコメントは発表した本人には届かず、私が読むだけである。最終発表の分だけ、エクセルですべてのコメントを統合し、並べ替えをして発表者ごとに切り分け、メールに添付して送っている。この膨大な手間。そして発表して何日か経ってから届くというタイムラグ。

技術的にはそれほど高度なものではないと思うし、きっとそういうことが可能なソフトがあるのだろうと思うが、まだ私の手の届くところにはやってこない。

新しいものに挑戦できなくなるほど年を取ってしまう前に、どなたか開発をお願いしたいものだ。

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