趣味(しゅみ)と興味(きょうみ)/《兴趣 xìngqù》と《爱好 àihào》

例1:その人の趣味によって大学の専門を選択するべきです。✕

これは心理学専攻の大学3年生の中国からの留学生が言った文である。流暢とは言えない日本語ではあるが、決して日本語を学び始めて半年や1年の学生ではない。

これまで多くの中国語を母語とする日本語学習者を教えてきたにもかかわらず、私は不覚にも「は? いったいなぜ趣味で専門を決めなくてはならないのか」と思ってしまった。

実はこの「趣味」を「興味」と言い換えると文の意味が通る。

例1’ その人の興味によって大学の専門を選択するべきです。✔

おそらくこの種の発話をする学生の頭の中では「趣味」にも「興味」にも《兴趣 xìngqù》という中国語訳が貼り付いているにちがいない。中国語だとどちらの構文にもこの《兴趣 xìngqù》が使えてしまう。【兴(簡体字)=興】

例2:私は日本のアニメに趣味があります。✕
《我对日本动漫有兴趣。》
例2’ 私は日本のアニメに興味があります。✔

例3:私の興味は日本のアニメです。✕
《我的兴趣是看日本动漫。》
例3’ 私の趣味は日本のアニメです。✔

王可樂的日語教室では中国語でこのことが説明されている。

では、逆に中国語学習者としての私の頭の中にはどういう中国語が貼り付いているかというと…

「趣味(しゅみ)」=《爱好 àihào》
「興味(きょうみ)がある」=《感兴趣 gǎnxìngqù》

例文を挙げると以下のようになる。

例4 你的爱好是什么?(趣味は何ですか)

例5 你对棒球感兴趣吗?(野球に興味がありますか)

ここで問題になるのが、《兴趣 xìngqù》と《爱好 àihào》の区別である。少しググると、例6のようにこの二語がいっしょに使われている文もあり、どうも似たような意味で使われているようだ。

例6 你的爱好兴趣是什么?

《兴趣 xìngqù》と《爱好 àihào》の区別について、韩叫兽という人が書いた《兴趣与爱好的区别是什么?》というページを見つけた。

これによると、《爱好 àihào》はテレビゲームや映画鑑賞など楽しくできることで、それをするとリラックスできて、ストレス解消になること。

一方、《兴趣 xìngqù》は、文章の執筆や読書、ジョギングなどのようにやる前は憧れていて、でもやってみるととても辛くて骨が折れて、やり終わってみるとすごいと思えること。とてもうまく行けばお金儲けにつながるかもしれないようなこと。…なのだそうだ。

これが一般的な感覚なのかどうかは定かではないが、「趣味と実益を兼ねて」「趣味が高じて仕事になった」などと言えるから、日本語の趣味にもこの両方が含まれていると思う。

「暇つぶし」に近いのが《爱好 àihào》で、向上心にあふれた崇高なものが《兴趣 xìngqù》ということか。

「趣味は何ですか」という文型が登場するのは『みんなの日本語 初級1』だと第18課である。

学生たちは習ったばかりのことばを使って、「読書です」「サッカーを見ることです」「ピアノをひくことです」などと言うのが精いっぱいだ。「先生の趣味は何ですか」と最後に自分に尋ねさせ、「食べることと寝ることです」と早口に言ってのけたベテランの先輩の顔が浮かんだ。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です