リアム・スカーレット版『白鳥の湖』in シネマ

ロイヤルオペラハウス in シネマでヌニェスとムンタギロフ主演の『白鳥の湖』を娘と見てきた。

新しい演出と言っても、プティパ&イワノフ版をベースにしているので、ブルメイステル版ほどは違わない。最もテンションの上がる黒鳥オディールと王子のGrand pas de deuxはいつもの音楽で安心した。

大きく異なるところといえば、道化や家庭教師がいなくて、ロットバルトの存在が大きくなっているあたり。いや、背丈はそれほどでもない(実際、王子より小さい)のだが、女王の側近として姿を変えて何度も現れる。そして、悪魔になったときのロットバルトの姿が、それほど大げさな衣装というわけではないのだが、なぜか今までにない怖さを醸し出している。デザイン美術のJohn Macfarlane の仕事らしい。

背景美術は重厚感が半端ない。特に第3幕の舞踏会(王子の誕生日は第3幕らしい)。チャイコフスキーの音楽の荘厳さに負けないよう、何度も作っては壊し、作っては壊しの試行錯誤を繰り返したとのこと。確かに『白鳥の湖』の音楽を聞くたびに、チャイコフスキー天才! と痛感する。

今までだって『白鳥の湖』の女王は本当に気高くて美しい人ばかりだったが、今回の女王 Elizabeth McGorian はその中でもひときわ高貴で美しかった。よくこんな人探してくるなあと思うと同時に、衣装やメイクの力がすごいのかもしれないとも。

The Royal Ballet rehearse Liam Scarlett’s new Swan Lakeという1時間あまりの動画がYoutubeで公開されているが、その案内役の女性がどうもこの女王を演じたElizabeth McGorianらしいのである。ほんとに同一人物?と何度も写真と動画を見比べた。

ムンタギロフはいつもながら絶品。ものすごい跳躍を決めつつ、無邪気な笑顔がなんとも素敵なジークフリード王子。初めての恋がうれしくて仕方がないという様子が伝わる。しかし、リハの動画でメイクをしていないとこを見ると、まるで小学生みたいな幼い顔。

ヌニェスはアップになると、年齢を感じる。ロイヤルバレエに来て今年で20周年らしい。40歳…。若すぎる王子とのギャップが気になってしまい、物語に入り込めなかったのが残念。巨大なスクリーンなのに3列目なんかで見るんじゃなかった。最近の映像技術は恐ろしい。生を舞台で見たならきっとそんなことは気にならないのに。でも、ヌニェスの黒鳥はさすがの安定感と迫力。

高田茜の第1幕第1 var. すべてのポーズが丁寧に決まっていて、プロが踊るとこういう踊りになるのかぁと感心。でも、もう一人の王子の妹フランチェスカ・ヘイワードと比べると、なぜか高田茜の眉はへの字に下がっていて悲しそうな表情に見える。化粧のせい? それとも何かつらいことでもあったの?

『白鳥の湖』の結末はいつもとても悲劇的だ。なぜこの悲しいバレエを飽きもせず何度も見てしまうのか。やはりチャイコフスキーの音楽のせいなのだろうか。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です