ピノコ! 『二十螺旋の恋人』フランソワ・オゾン

久しぶりにフランソワ・オゾン監督作品を見た。『二重螺旋の恋人』L’Amant double  である。

久しぶりにこんなにドキドキする映画を見た。セックスシーン、グロテスクなもの、サスペンス、いろんな意味でギョッとさせられることが多かった。

しかし、いろんな意味でよく練られた映画だ。すべてのシーンの隅々まで意味あるものが映っている。ヒロインがスカートを履いているだけで、その意味がビンビン伝わってきてしまう。あーあ。

私の席の周りには、おばあちゃんと呼んでいいくらいの年配の女性の姿が目立った。激しいセックスシーンを見上げ、息を呑む、若くない私たちを想像すると滑稽に感じた。でも、たまには、こういう刺激も受けないとね。

2002年『8人の女たち』までのオゾン作品はけっこう見たと記憶しているが、それ以降はずっと見られていなかった。昨年の今頃かかっていた『婚約者の友人』Franz も見たい見たいと思いながら、結局見られなかった。

フランス映画を観ると、日本語の字幕で意味をきちんと追えているからこそなのだと思うが、自分がすごくフランス語の聞き取りができるようになったような錯覚を起こす。この感覚がすごく好きだ。

フランス人のものの考え方にシンクロすると、すごく自由になった気がする。

中国語を聞いていても、日本語の敬語の束縛から解き放たれる感じはあるが、アジア的な家族観や義理がたさ、男尊女卑な考え方などは共通で、いやその束縛は時に日本社会以上だと感じることさえある。

フランス語だと、そういうことすべてをリセットして個人と個人の関係が成り立っている感じ。自由だが、とっても孤独。社会的の押し付けはないが、自分の責任ですべてを選択して行かなくてはならない。

この映画のテーマは双子である。ネタバレに近いので、詳しい説明は省くが、手塚治虫の『ブラックジャック』に出てくるピノコの生い立ちを思い出した。

双子といえば、1999年塚本晋也監督の『双生児 -GEMINI-』というのもあった。本木雅弘とりょうが、怪しく張り詰めた独特の雰囲気を醸し出していた。江戸川乱歩の原作を映画化したと聞き、納得である。

映画を見まくって、刺激を求めていた90年代の私に、今日は少し戻った気がした。この手の映画はやはり映画館で観るに限る。

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