閩南語と北京語の切換えの不思議―陳竹昇@台湾名人堂―

2017年12月24日放送の《台湾名人堂》(台湾のインタビュー番組)に出演している陳竹昇を見た。

《阿莉芙》(2017)という映画に女装して出て、金馬奨で助演男優賞を受賞したらしい。細くて小さい体つきにくりくりした好奇心満々の眼が印象的である。

《波麗士大人》《罪美麗》《妹妹》などでも見かけている。《大佛普拉斯》について検索していてかかった動画だったのだが、ついつい最後まで見てしまった。

陳竹昇は、15歳から舞台の裏方の仕事を始め、様々な雑用をしているうちに舞台にも上がるようになったという経歴の持ち主。

けっこう堅めの番組であるにもかかわらず、閔南語(いわゆる台語)を話し始める。初めは「なんだ? この人」と思った。

だが、話を聞いていくと、映画《艋舺》《雞排英雄》などでは台語指導もしたという。台語のプロのようである。結局番組の半分近く台語で話したと思う。

台語は台湾ドラマを見るときの私の天敵だが、不思議なことにこのおじさんの話す台語は聞き取れそうな気がしてくる。滑舌がはっきりしているからか、表情豊かに話すからかわからない。もちろん下に字幕がついているからわかったような気になっているだけなのだが。

台湾人の留学生に訊いても、ほとんどの人が台語は聞き取れるけど、あまり話せないとかうまくないとかいう。でも、聞き取れるだけでも私からすると羨ましい限りである。

関西弁のような状態だということか。ほぼ日本全国の人が聞き取れるけど、話せと言われると話せない。伝統的な東北弁や沖縄弁になると、ほとんどの人が聞き取れない。

しかし、驚くべきはその切換えの起こり方である。おそらく、台語向きの話題と国語(北京語)向きの話題があるはずだとは思うが、全く意味なく切換えが起こっているようにも見える。

私自身は関西弁と標準語をそうバンバンは切り替えられない。

関西弁と標準語は文字にすると同じものがほとんどだが、アクセントはほとんどの語で異なる。そのため、標準語で話そうとするときは気合を入れて、無理して東京アクセントを使用しているので、そうそう簡単に関西弁に戻ったりしない。

外国人と話すとき、お話を読むときなどは標準語である。子どもの頃のごっこ遊びも標準語で話される。要するに我々関西人にとって、いわゆる「東京弁」はお化粧した「大よそ行き」のことばなのである。(もちろん切換えできる人の場合は、だが)

初めて東京へ行ったとき、道行く人の話すことばがことごとく東京アクセントで(当たり前だ!)、その人たちがごっこ遊びかお芝居をしているかのように思えたものだ。

学習発表会で劇を演じるときも関西弁だと子どもたちも生き生きと言えるのだが、標準語だとどうも本読みのようになる。

そういえば、このあいだ見たラジェムの芝居でも役者さんたちは美しい標準語を話していて、お芝居らしいお芝居だったと感じた。関西弁の芝居もあるだろうが、そうなると方言指導が必要な人もいていろいろと手がかかるのかもしれない。

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台湾の舞台劇はどうも台語が多く使われているようだ。台湾に行ったら是非見てみたいと思うのだが、台語で話されていなくても字幕がなかったら、私はほとんどわからないまま帰らなくてはならない…。

それとも、文楽みたいに字幕が出るのだろうか。英語で? うっわー、つらっ。

郷土色を際立たせることと国際化は、現在では観光客向けにどちらも立てなければならぬ柱となっているが…悩ましいところである。

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