「世代」と「世帯」:中国語母語話者には同音異義語?

子どもの貧困についてレポートを書く課題を出すと、一人ならず「世代」と「世帯」を打ち間違えてくる中国語母語話者がいる。

意味がわかっていないわけではないと思う。

「せだいsedai」と「せたいsetai」は有声無声のミニマルペアだから? それも大きな理由の一つだが、もう一つ理由があると私は踏んでいる。

中国語で発音が同じなのである。どちらもピンインだと/shìdài/となる。

だが、日本語の「世代」は中国語では《一代》と言われることが多い。例えば、「若い世代」は《年轻的一代》となる。

中国語で《世代》はどのように使われるかというと、『小学館中日辞典第2版』によると、

1 長い年代、長い間
例《多少世代以来的习惯》(長い間伝わってきた習慣)
2 代々、何代も
例《世代相传》(代々伝わる)

「世帯」という中国語はない。
単位としてなら《戸》、単親世帯などの場合は《单亲家庭》のように《家庭》となる。

いつもながら不思議なのが、こんなにかけ離れた意味のことばを取り違えるだろうかということと、上級レベルでもまだ頭の中では日本語の熟語をピンイン読みしているのかということである。

ほかにも「権力」と「権利」の中国語の発音は同じで、どちらも/quánlì/である。

日本語では「けんりょく」と「けんり」で全く別の語であることが明白だが、同じ発音だとどうも漢字の書き分けがあやしくなるようだ。

「追求/追及/追究」などの例を見るまでもなく、多くの同音異義語の書き分けは確かに難しい。かなり大きく意味の異なる「以外/意外」などでもよく書き間違いが起こる。人のことを言えた義理ではないのかもしれない。

中国語を母語とする日本語学習者にしてみれば、日本語では何ゆえ好き好んで「世帯」などということばを使うのかと思っているのだろう。「家庭」と言っても「戸」と言っても日本語で通じるのにね。

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