中国語の《營業》と日本語の「営業」にはズレあり

2年ほど前、日本語の文法の授業で「営業職に向いていない」という例文が出てきた。

「営業職」がどんな仕事をするのか学生たちに尋ね、「向いていない」の意味を導入しようとした。すると、思うような答えがなかなか返って来なかった。どうも中国語でイメージされる《營業》は日本語の「営業」とずれていると感じた。

私が日本の「営業職」について説明すると、ある女子学生がそれは台湾で《業務部》というと言った。そう言えば、台湾ドラマ《後菜鳥的燦爛時代》(2016)では《業務部》がいわゆる外回りの「営業」をしていた。

では《營業部》の仕事とは何なのか。

2011年に大ヒットした台湾ドラマ《小資女孩向前衝》の中で、ヒロイン沈杏仁シェンシンレンは《京師百貨營業部》で働いている。第6話に沈杏仁が入社面接を受ける場面の回想シーンがある。そこで、面接官だった史特龍が《樓管》の仕事は何かと尋ねる。《樓管》とは沈杏仁が普段している仕事である。

準備万端で面接に臨んでいた沈杏仁は、よどみなく以下のように答えた。

《活動安排、商品進駐、櫃位装修、管理専櫃小姐、顧客服務、還有樓面擺設跟規畫》
(イベントの企画、商品の選定、売り場作り、販売スタッフの管理、顧客サービス、それからフロアの配置や企画などです)

比較のため、以下に百貨店業界の職種と仕事内容を引用する。
(https://gyokai-search.com/syusyoku/dept02.html)

販売(販売、マネージャー)
担当する売り場で接客、商品の販売、発注、在庫管理、伝票処理などを行います。また、販売スタッフへの指導や教育、売場全体のマネジメントなども行います。

仕入・物流(バイヤー)
バイヤーでは担当する商品の選定、仕入、新規ルートの開拓などを行います。市況や顧客動向の変化などを加味し、いかに売れる商品を仕入れるかがバイヤーの腕の見せ所です。

販売支援(販売促進、店舗企画)
販売支援ではより多くの集客を見込むため、イベント、物産展などの企画、運営を行います。また、リビングフロア全体としての商品展開をまとめ、より機能的で売れやすい売場を作ります。

営業(外商営業、法人営業)
外商営業とは多額の購入をする個人や法人に対して、店舗外で直接顧客宅を訪問して商品を販売する仕事です。

やはり《營業》の仕事は「販売」に偏っており、日本語で「営業」とされている部分は《招商部》(外商部)が担っていると言える。《招商部》もこのドラマに出てきていて、《營業部》と衝突していた。

業界にもよるかと思うが、今後、中国語圏で働く日本人や日本で働く中国語話者は、日本語の「営業」が中国語の《業務》であることを知っておく必要があると思う。

しかし、こんなに守備範囲の広い《營業部》があんな人数で、しかもあんな働きぶりでよく回るものだ。まあ、ドラマとはこういうものなのだろう。

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