Polyglotsというアプリを試してみた。
いろんな記事の中から一つを選んで、英文を見ながら聞く。音声の速さも調節できる。音声のないものは、速読練習のため、スクロールの速さをコントロールする機能がついている。しかも、わからない単語はすぐ意味が調べられ、次回このアプリを開く際、クイズとして出題される。
記事の朗読音声が有料コンテンツとは知らず、1回だけのお試しに私が選んだ記事は中国の習近平の国家主席の任期撤廃の動きに関するものだった。
くまのプーさんが中国のインターネット上で削除されているというのは日本でも報道されていた。習近平は確かにくまのプーさんに似ている。政府の問題点を大っぴらに指摘しにくい中国では暗喩を使って指摘する。どれがその暗喩にあたるのか一つ一つ検討できないので、プーさんをすべて削除しているというのである。
安倍首相がロバの「イーヨー」、オバマ大統領がトラの「ティガー」に例えられたこともあり、何度か話題になっている。
そこで、私が気になったのは、英語で《習近平 Xí Jìnpíng》がどう発音されるかである。日本語の片仮名で表記すると「シージンピン」に近いが、英語音声ではXi Jinpingを「ジージンピン」と読んでいるように聞こえた。
英語で少しググったところ、この名前をどう発音したらいいのかを説明したサイトやビデオがあった。英語として読むときに何と発音するか、英語母語話者たちも悩んでいるという証拠である。問題は英語としての発音なので、もちろん声調は無視されているが、「Sheよりseeに近い」などといったコメントが入っている。
英語母語話者にも少しは勉強してもらわないと。「ジージンピン」と読まれた日には、中国語が分かる人でも誰のことかわからなくなる。
Xiが英語で読めないという話の前に、中国語を学んだことのない、日本語母語の英語学習者が中国の話を英語で聞くと何のことやら全く理解できないという問題がある。日本語で「もうたくとう」と呼ぶ毛沢東は、英語でMao Zedong, Mao Tsetung。表記が二種類あるのは、中国大陸で作られた拼音字母(ピンインじぼ)によるか、それ以前のウェード式綴り(台湾の地名や人名はこちらが多い)によるかである。どちらにしても「マオ」と言われたら毛沢東と覚えるしかない。
英語で覚えればあとは安心かというとそうでもない。フランス語では《上海 Shànghǎi》をフランス語の発音規則のまま、「シャンガイ」と読む。フランス語のhが発音されないのは有名な話である。
昨日見た「ボリショイ・バレエ in シネマ」では、ロシア語、フランス語、英語を駆使してインタビューや解説をする女性が出てくる。その際、作曲家や振付師、地名などはもちろん各言語で発音を変えている。昨日の『ジゼル』の解説では「サンクトペテルブルグ」を英語で「セントピーターズバーグ」と言っていた。
「シーザー」を「カエサル」というようになっていることからもわかるように、歴史上の人物名や地名などは現地音読みが進みつつある。
正しい現地音読みが普及することを望む一方、その言語の音韻体系では発音しにくい音に悩まされたり、《習近平 Xí Jìnpíng》のように綴り字との関係に悩まされたりすることになる。
日本語の漢字音にも同様のことが今までにも起こっているし、これからも起ころうとしている。すでに呉音・漢音・唐宋音と三種類もあるのに、現在ではさらに現代中国語音、広東語音、韓国語の字音まで加わることになり、複雑さを増している。
グローバル化についていくのはなかなかたいへんであると思う今日この頃である。