作文の紙の「おかわり」

2000年前後の数年、夏休みの一ヶ月フランスのグランゼコールから20名程度が京都へ日本語研修に来るというプログラムを担当した。

ほとんどが男性で女性は毎年一人いるかいないか。

国で1年かけて『みんなの日本語』を13課まで学習し、来日後の一ヶ月で25課まで終わらせるのが通例だった。

全員が日本の家庭にホームステイしていた。

そのグランゼコールの学生たちは文武両道で、頭も良ければ運動能力にも優れている上、必ず1、2種類の楽器に秀でているという人たちで、多くが非常に裕福な家庭の子女だった。

24課で今まで誰がどんなプレゼントをくれたか尋ねると、船や飛行機、島などという答えが飛び出すクラスだった。

最後の試験で作文を書いていたときのこと。
体格のいい青い目の好青年が同僚のところへ来て、こう言ったそうだ。

先生、おかわり。

一瞬キョトンとしたが、作文の紙をもう一枚くれと言っているのだと気付き、渡したという。いつもホストファミリーのうちで、いっぱいおかわりしてるんだなと思ったと、我が同僚。

この場面で「おかわり」が使えたこと、今だとさすがと思う。でも、やっぱりおもしろくてその話を聞いたときは笑ってしまった。

幸い、本人のいるところではなかったが。

学生の間違いは笑ってはいけない。

まだまだ修行が足りない日本語教師である。

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