なんとインパクトの強い音だろう。
フランス語起源の英語の単語、debris からの外来語。
研究社『英和中辞典』によると、debris の意味は、
1(破壊物の)破片,瓦礫(がれき).
2【地質】 (山や絶壁の下に積もった)岩くずの堆積物.
福島県での原発事故に出てくる「燃料デブリ」とは『知恵蔵mini』によると
原子炉が異常過熱した結果、溶融した核燃料や原子炉構造物、制御棒などが冷えて固まったもののこと。
私にとっておもしろいのは、日本語としてのデブリということばの響きがとてもふてぶてしい感じがすることである。意味がよくわからないうちから、何やらやっかいなモノを感じてしまう。
space debris は「宇宙ゴミ」などと訳され、デブリという外来語を普及させなかったのに対し、この「燃料デブリ」は一度聴いたら、忘れられない。
まず濁音のイメージが悪い。エ段の音はイメージを悪くする。「ブ」は「ぶた」の「ブ」と同じで、豚の鳴き声もブーブーだ。擬態語「でぶでぶ」や太った人を表す「デブ」を連想するなと言う方が難しい。漢字表記や語構成が明らかでも「出不精」を「デブ症」のように感じてしまうのに匹敵する。
それに、最後が「リ」であるところも絶妙ではないか。
「ブスリ」「ゴロリ」などの1回で完結する動きであることを感じさせる擬態語のようにも、「モグリ」「サボリ」のような動詞の名詞化のようにも聞こえ、まるで日本語の造語成分で出来上がった語のようなのである。
英語の debris が仏語起源で専門的なレベルの堅い表現なのに対し、日本語になったときの「デブリ」はあまりにも馴れ馴れしい響きである。
いじめなどに悪用されないか心配してしまうのは、私だけだろうか。