日本で「叶」という漢字は、「かのう」という姓でも使うし、「夢を叶(カナ)える」と動詞に使いもするが、中国の《叶 yè》は「葉」の簡体字である。
いつも悩ましいのは、《叶》という姓の中国人留学生がいたときに「ヨウさん」と「葉」の日本語読みで呼びながら、「葉」の漢字には変換せず、そのまま「叶」の字を使うことである。
「林(リン)さん」「林(ハヤシ)さん」とはわけが違うだけに「葉」に変えてほしいと常々思うが、当人としては「叶」という字が日本にあるなら、これ幸い…と慣れ親しんだ方を使いたいのだろう。
「叶」は「峠・辻」などと同じように日本で作られた国字かと思っていたら、中国で作られた漢字だった。
『新漢語林』(2008年 大修館書店)
「叶」
字音:漢音キョウ(ケフ)
呉音ギョウ(ゲフ)
〔入〕葉 中国語音 xié
字義:かな-う(カナフ)=⇒協
㋐合う。一致する
㋑和合する。調和する。
〔国〕かな-う(カナフ)。
㋐望みどおりになる。
㋑なしうる。できる。
㋒匹敵する。及ぶ。
昔の漢字音を示す四声では入声音「葉」に属することから、古音では同音だったらしい。呉方言では、現代でも発音が近いらしく、江蘇省あたりで《茶葉》を《茶叶》と簡略化し始めたことがきっかけとなったようである。
「叶」字是怎么从「葉」简化来的?
https://www.zhihu.com/question/33045426
(2018年2月22日閲覧)
辞書で調べてみると、現在でも《叶》にもともとあった xié の音が使われるらしい。
《叶韵 xiéyùn》
韻に合わせる.古音で違う韻の文字を通用させる.
『日中辞典』第二版 2003年 小学館/北京・商務院書館
《叶》には yè と xié 二つの発音があるのだということで済んでいるようである。
ただ…
このまま多くの《叶》さんが日本に来たら、あるいはすごく有名な《叶》さんが現れたら、「叶」という漢字の日本の音読みがヨウになってしまったりしないだろうか…
そんな、たわいもないことを危惧してみたりする今日この頃である。
日本在住20年の中国人の叶です^ ^
実は元々10年ほど前までは葉での名前登録ができていたのですが、日本の入国管理局の方針変換で日本にその漢字がある中国名についてはそのままの漢字を使わなければいけないということになりました。
そのため在留カードを更新する際に叶と自動的に更新されて、それ以降叶を使い続けています。
自主的に変えたわけではないので苗字変更証明も出してもらえず、葉で書かれた卒業証明書が使えなかったり、銀行や免許証などすべてを変更する必要があったりとかなり不便な思いをしました…
叶と葉のように日本では全く別の意味になる漢字は大変レアなケースなのですが、嬉しいような、悲しいような、という一面もあります…
コメント、ありがとうございます。入国管理局の方針だったとは貴重な情報、感謝します。しかも、苗字を勝手に変えられてしまったことで様々な不利益が生じているのですね。お気の毒です。行政の方でももう少し漢字や中国語の勉強をしてくれたらいいのにと思います。
お気を遣っていただいてありがとうございます!>_<
両国とも膨大な量の漢字とそれぞれのバックグラウンドがありますから、こういう細かい違いは所々起こり得ますよね^ ^
ここまなさんは色んな言語をご研究されていて素敵です!応援しています^ ^
2003年に来日した葉です。2012年の入管法改悪で無理やりに叶になってしまっています。なんで意味を無視して、形ばっかりを優先するのか、入管の漢字ルールに非常に、不満を持って10年以上経ちます。文化人のはずなのに